『噴火と寒冷化の災害史 「火山の冬」がやってくる (角川新書)』2022/8/10
石 弘之 (著)
都市機能をまひさせ、地球を寒冷化させる……火山の噴火と寒冷化の災害の歴史をたどる本で、内容は次の通りです。
第一章 富士山は噴火するのか
1.火山噴火の集中期
2.地球は火山でつくられた
第二章 「火山の冬」と気候変動
1.「火山の冬」の原因は
2.535年の歴史ミステリー
3.迫りくる大飢饉
第三章 九州南部の縄文文化を崩壊させたカルデラ
1.巨大カルデラの島
2.文明を崩壊させた火山噴火
3.タイムカプセルのヴェスヴィオ山
第四章 悪夢の時限爆弾―破局噴火
1.破局噴火とは
2.20世紀の火山災害と未来の危険
3.生態系は噴火からどう回復したか
4.「予知」か「予言」か
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「第一章 富士山は噴火するのか」では、日本には火山噴火の2回の集中期(9~10世紀と18世紀)があり、今後、3回目が始まるのではないかと書いてありました。
「気象庁の私的諮問機関である火山噴火予知連絡会元会長の藤井敏嗣(東京大学名誉教授)は次のように語る。
「現在の地殻の状態は9世紀と似た不安定な状況にある。過去の記録も踏まえると、最近の火山活動の活発化は東北地方太平洋沖地震が示しているように日本列島が活動期に入ったためではないか。」」
また地震と火山噴火は関係が深いそうです。
「(前略)地震と火山噴火は関係が深い。世界的に見ても巨大地震の発生後に火山が噴火した例は多い。20世紀以降、世界で6回のM9地震が発生したが、そのすべてで地震発生から5年以内に半径600~1000キロの範囲内で複数の火山が噴火している。」
……1707年の巨大な「富士山宝永噴火」の場合は、その49日前に、南海トラフ巨大地震「東海」「東南海」「南海」の三連動地震「宝永地震」が発生しています。そして次のように書いてありました。
「政府の中央防災会議は、もしも首都圏を含め南海トラフの「三連動大地震」が発生した場合、太平洋の沿岸地域では最大で30メートルを超える大津波が押し寄せ、最悪のケースで死者は32万3000人、全壊・焼失建物は238万6000棟、直接被害総額は全国で220兆円と想定する。これは内閣府が発表した東日本大震災の総被害額の13倍にもなる。」
「(富士山が宝永噴火と同規模の噴火を起こした場合)中央防災会議は2021年3月、首都圏が受ける想定被害を公表した。火山灰は、噴火から約3時間で都心に押し寄せる。噴火後の15日目には都庁付近では10センチほどつもり、東日本大震災で発生した廃棄物の10倍にあたる総量4億9000万立方メートルの火山灰を都内から撤去しなければならない。」
……降灰で電気設備がショートして大規模停電になる他、健康被害、交通途絶(航空機も)、インフラ破壊などが避けられないようです(怖)。
「主な火山災害には、火砕流、溶岩流、岩屑流、泥流など地表を流れるもの、噴石、降灰、降礫、火山ガスなど火口から噴出して降りそそぐもの、さらに二次的に発生する津波や洪水、火山性地震、地殻変動、山崩れ、空震(噴火のときの衝撃波)などがある。」
……さらに灰などが太陽光をさえぎることによる寒冷化も……富士山が噴火しないことを祈りたいです……。
「第二章 「火山の冬」と気候変動」では、巨大火山噴火による寒冷化災害が、過去の王国や文明を崩壊させてきたことについて、数多くの事例があげられていました。
例えば、西暦535から536年には地球規模の大異変が起きたようで、氷床コアの分析から噴火が4年も続く超弩級の火山噴火があったと推定されているそうです。
これは日本にも影響したのか、日本でも535年ごろ寒冷化や飢饉発生。さらに540年には、世界的異常気象が起きた大陸から、飢饉や伝染病を恐れた人々が難民となって日本に流入。最新の技術や文化が(天然痘も)伝わったのだとか……大災害は文明を滅ぼすだけでなく、文化を伝播させる力にもなるんですね……。
「第三章 九州南部の縄文文化を崩壊させたカルデラ」によると、鬼界カルデラ(鹿児島地溝の最南端)が、日本の歴史に大きく関わっていたようです。鬼界カルデラは、15万年前、9万5000年前、7万3000年前に噴火していますが、その3回目は超巨大噴火で、鹿児島低地には厚さ2~3メートルの火山灰が。日本各地に(東北にまで)痕跡が残っているそうです。
「火砕流は、約100キロ離れた九州本土まで達し、南九州の集落をのみ込み特異の文化を築いた初期の南方系縄文文化を壊滅させた。」
でもこの被害を逃れた人々もいたようで、彼らは紀伊半島や伊豆半島にまで移り住み、各地の縄文文化へ影響を与えたのだとか。
そして最後の「第四章 悪夢の時限爆弾―破局噴火」では、過去の破局噴火や、今後起きそうな破局噴火のことが……(もちろん本書内ではもっと詳しく説明されています)。
・過去の破局噴火(1700年以降)
1)1815年、タンボラ山(インドネシア)
2)1883年、クラカタウ島(インドネシア)
3)1902年、プレー山(仏領マルティニーク島・カリブ海)
4)1985年、ネバド・デル・ルイス山(コロンビア)
5)1991年、雲仙岳(日本)
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・今後起きるかもしれない破局噴火
1)阿蘇山カルデラ(日本)
2)イエローストーン国立公園(アメリカ)
3)フレグレイ平野(イタリア)
4)白頭山(北朝鮮・中国)
5)北太平洋(カムチャッカ半島からアラスカ)
6)アイスランド
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地震も火山噴火も多い災害国・日本に住んでいると、震度4程度の地震ぐらいには驚かなくなってしまっていますが……やっぱり地震や火山噴火などの災害への備えは必要ですね! 今後も定期的に防災情報をチェックしていきたいと思っています。
火山噴火の恐ろしさを教えてくれる本でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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