『図解 「地形」と「戦術」で見る日本の城 (イースト新書Q)』2021/1/10
風来堂 (著)

 実戦の舞台となった城から、とてつもない巨城、知られざる名城まで、地形を生かして築かれた57城を厳選。実際に現地を歩いた経験をふまえて、立体型の縄張図と解説で実戦さながらの攻め・守りのポイントを徹底分析してくれる本で、内容は次の通りです。
序章 城の基礎知識
第一章 実戦の舞台になった城
第二章 城好きもうなる技巧派の城
第三章 とてつもない巨城
第四章 謎だらけの個性的な城
第五章 知られざる隠れた名城
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「序章 城の基礎知識」から参考になる知識がいっぱい。
「城全体の配置を「縄張り」、その見取り図を「縄張図」」と呼ぶとか、城の配置を見るときは「「対敵」と「籠城」の二つの観点から見るとわかりやすい」など。「対敵」の観点としては、城の内外で敵の動きを分断し遮ることが重要で、「籠城」の観点からは、城内が広くて平坦な方が守備兵が多くおけるとか、水源の確保が重要だそうです。
 そして守備側の戦い方のセオリーとしては、「高低差」と「角度」の二つの確保が大切なのだとか。攻撃力を高める「高低差」、自分の身を隠しつつ敵の背後や二方向から狙える「角度」……なるほど、確かに「名城」はこれらすべてに優れているような気がします。
 また、「虎口」「馬出」「土橋」「曲輪」「堀」「土塁」「切岸」「石垣」「天守・天守台」「土塀」などの城の各部の役割と特徴も、イラスト付きで簡単に説明してくれるので、こういう基礎知識があると、城めぐりがもっと楽しそうな気がします。
 そしてこの本の最大の特徴が、各城の概要の説明だけでなく、所在地・現地を歩いて描いた立体型縄張図・攻略のポイント(写真付き)が掲載されていること! これを見ながら現地を歩くと、城の構造の役割などを理解できるので、とても参考になると思います(本書は新書版なので、携帯にも便利です)。
「まわり方のヒント」もあって、例えば「滝山城(東京都八王子市)」の場合は、「整備が進み案内板なども充実しており、初心者でも訪れやすい。堀や土塁の威力を実感するのに最適だ。高低差は大きくないが、城内の通路は複雑に折れ曲がっており、侵入者の動きを制約していたことがわかる。」と書いてありました。
 各地の城を歩く時には、その周辺の施設で城内の簡単な地図を手に入れられることもありますが、入手できないこともあるので、その場合はこの本の「立体型の縄張図」がとても役に立つと思います。全国の城めぐりが好きな方は、ぜひ手にとってみてください。また城を舞台とする作品を書くときにも、より臨場感のある描写をするための参考資料になると思います。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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