『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル<第4版>』2022/3/29
中澤佑一 (著)

 インターネット上での情報発信により、誹謗中傷・権利侵害などの被害を受けた場合の、その元となる情報を削除し、情報の発信者を特定したうえで、発信者に対して権利を行使するための手続きを具体的に解説してくれる『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル<第4版>』です。
 誹謗中傷、個人情報の流出、コンテンツの盗用など、インターネット上での情報発信により被害を受けるケースが後を絶ちません。もしも突然、そんな被害を受けてしまったら、いったいどうすればいいのか……大半の人が途方に暮れてしまうのではないかと思いますが、この本は、そんな時にどのように行動すればいいのかを具体的に教えてくれます。その概要は次の通りです。
「インターネット上の権利侵害に対する法的対処のフローチャート」
1)問題の発生・発見
→2)対象の確認(問題となっている書き込みの内容やURLを確認する。法的請求の相手方を決定する。)
→3)必要書類の準備(本人確認書類や証拠資料など)
→4)削除請求前の証拠補確保・保存
→5)サイト管理者等に対する裁判外での請求
→5-1)(5)を拒否された場合や5)を行わなかった場合)サイト管理者等に対する仮処分
→6)削除成功、IPアドレス等の取得
→7)アクセスプロバイダに対する裁判外での発信者情報消去禁止請求
→8)アクセスプロバイダに対する発信者情報開示訴訟
→9)勝訴・発信者情報(住所・氏名)の取得
→10)発信者に対する損害賠償請求・刑事告訴など
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 そして、これらに関する具体的な説明だけでなく、サービス、サイト、プロバイダごとの対応や、実際に利用できる書式(各種請求や処分の申立てに用いる書式26種)まで、とても詳しく紹介してくれます。
 とても参考になったのが、「証拠として保存すべき情報」。証拠としては、1)書き込みの存在およびその内容、2)書き込みがあったウェブサイトのURLを保存すべきなのですが、その手順は次のようにすると良いそうです。
「保存する方法・手順」
1)印刷物として保存する(ウェブブラウザで問題のページを印刷する)
2)画面を画像として保存する(MicrosoftPaintとキーボードの「PrintScreen」キーを利用)
3)動画で保存する(証拠となるウェブページを表示する一連の行動すべてをビデオカメラで撮影する)
 ……この「動画で保存する」という方法には気づいていなかったので、すごく参考になりました。
 さて、「インターネットトラブルへの対処は、迅速な対処が非常に重要」とよく言われますが、それはトラブルの拡散が速いという理由だけでなく、問題となる書き込みなどを行った発信者を特定するためのアクセスログの保存期間が短いという理由もあります。
「アクセスログの保存期間は大手のアクセスプロバイダでは非常に短く、3か月から6か月といったところです。(中略)アクセスプロバイダのログが残っていなければ投稿者の特定には至りません。」
 どうしても許せないほどの誹謗中傷を受けた時に迅速に行動できるよう、あらかじめこのような対策と手順を知っておくことは、現代を生きる私たちにとって必要なことなのかもしれません(悲しいことですが……)。
 また令和2年の総務省令改正によって、開示請求ができる発信者情報に「発信者の電話番号」が追加されました(ただし電話番号ルートを活用するには弁護士代理が必須)。でも電話番号で発信者が特定できると言う確証はなく、開示請求を行う相手方が海外事業者であることも多いので、従来のIPアドレスルートと並行して電話番号ルートも進めるという活用法が安全なようです。
 それにしても……インターネットにおける誹謗中傷への法的対策って、想像以上に面倒なんですね! ITなどの技術情報には決して弱くない私ですが、読んでいるうちに「インターネットトラブル」に巻き込まれた時には、やっぱり、それを専門とする弁護士に依頼すべきなんだろうなーと思ってしまいました(汗)。
 とは言っても、このようなマニュアルを読んで、対策への知識をつけておくことは大事だと思います。インターネットを活用している方は、ぜひ一度は読んでみてください。お勧めです。
 この本は「第4版」ですが、IT世界の変化はとても速いので、読む(購入する)場合は最新版かどうかをぜひ確かめてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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