『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた (ブルーバックス)』2022/3/17
奥田 昌子 (著)
近年のゲノム生物学の進歩によって、生活習慣や環境で遺伝子の働きが変わり「病気のなりやすさ」も変わることが明らかになってきています。日本人の遺伝子と体質の特徴を捉えていくと、どうすれば遺伝的なリスクを抑えて健康に過ごせるかが見えてくる……最新科学が示す「日本人が健康になる秘訣」を教えてくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 体の「設計図」が健康と病気をつくる
第2章 日本人の「遺伝子」と「体質」にはどんな特徴があるか
第3章 遺伝子についた小さな傷が病気を引き起こす
第4章 設計図の違いだけで「なる病気」は決まらない
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「はじめに」には、次のように書いてありました。
「体質はすべて生まれ持った設計図をもとに作られていて、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や、がんなどの病気、肥満、薄毛にどれくらい「なりやすい」かも設計図が決めています。(中略)
けれども、体の「設計図」は紙に書かれた設計図とは違います。生きているかのように日々変化して、それまでの指令を突然取り消すこともあれば、指令を強めたり、弱めたりすることもあるのです。
そのため、生まれた時点で病気になりやすい体質を受け継いでいても、必ずしも病気になるとは限りません。」
「病気の遺伝子を受け継いでいても、減量や運動を通じて乳がんの危険を約3分の2まで下げることができます。(中略)
こんなことが起きるのは、心の状態を含めた生活習慣ならびに暮らす環境が「設計図」を実際に使うかどうかに関与しているからです。」
……えー、そうだったんだ。例えば両親がともに「がん」を発症していても、その子が絶対に「がん」になってしまうわけではないそうです。次のように書いてありました。
「がんの発生には生活習慣と環境が大きく影響し、遺伝は最大で19%しか関与しない。気管支喘息、2型糖尿病などとくらべ、がんは遺伝しにくい病気といえる。」
そして日本人には、「穀物を消化してエネルギーを効率よく取り出すのに適している」とか、「欧州系の人とくらべて腹囲が同じでも内臓脂肪がつきやすく、高血圧や糖尿病になりやすい」などの特徴があるようです。
とても参考になったのが、「第4章 設計図の違いだけで「なる病気」は決まらない」の働きバチと女王バチの話。働きバチと女王バチは同じゲノムなのですが、ローヤルゼリーを口にすることで遺伝子のスイッチが切り替わり、女王バチになるようです。つまり遺伝子は「持っているかどうか」より、「働いているかどうか」が問題なのだとか。
……なるほど。「ゲノムが変わらなくても、どの遺伝子が働くかによって体質は変化する」ので、健康を保つための努力をすれば、たとえ病気になりやすい遺伝子をもっていたとしても、健康でいられる期間を長くすることが出来るってことですね!
この本は、喫煙や飲酒、脂肪の摂取を少なくして、玄米食や食物繊維、海藻、緑茶、発酵させた大豆、魚に多く含まれるDHAを摂取すること、さらに運動や生活が楽しいと感じる気持ちを持つことなどが、病気の発症率を下げる可能性が高いことを教えてくれました。
……要するに、ごく一般的な健康法と同じでしたが、その科学的根拠が分かったような気がします。私がすでに実行していた健康法は、病気になりにくい体質も作ってくれていたんだ。良かった……今後も続けていくための「科学的な励まし」をもらえた気がします。第4章のまとめの最後に、次のように書いてありました。
「受け継いだ体質の大枠は変わらないので、体質を知り、体質に合う生活を送りたい。そのうえで遺伝子変異が不必要に起きるのを避け、遺伝子スイッチによい影響が及ぶよう努めることが大切である。」
……食事や運動に気をつけて、遺伝子スイッチによい影響が及ぶよう努めようと思います。
ここで紹介した以外にも、とても参考になる記事が満載なので、みなさんもぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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