『ビーカーくんがゆく! 工場・博物館・実験施設: そのこだわりにはワケがある! 実験器具たちのふるさと探訪』2022/1/13
うえたに夫婦 (著)

 ビーカーやリトマス紙、ろうと、温度計、上皿天秤等々……実験器具がどのように生まれたのか、各メーカーに取材した製造工程のマンガに加え、気象測器歴史館、科学技術館などの博物館、スーパーカミオカンデなどの巨大実験施設を、楽しいイラストで紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
CHAPTER1 実験器具(ガラス・紙)のふるさとへゆく
第1話 ビーカーが生まれる場所
第2話 リトマス試験紙が生まれる場所
第3話 桐山ろうとさんに会う
第4話 棒温度計が生まれる場所
第5話 pHメーターのふるさとへゆく
COLUMN 1 ガラス器具ってアートっぽい
CHAPTER2 実験器具(金属)のふるさとへゆく
第6話 ピンセットが生まれる場所
第7話 上皿天びん・分銅が生まれる場所
第8話 スチールウールが生まれる場所
第9話 乾電池が生まれる場所
COLUMN2 人類文明の背景にピンセットあり!
CHAPTER3 博物館へゆく
第10話 気象測器が集まる場所
第11話 貴重な実験器具が集まる場所
第12話 科学技術を楽しむ場所
COLUMN3 楽しい(?)雨中での雨量計測
CHAPTER4 でぼにあん先生のところへゆく
第13話 でぼにあん先生のおもしろ実験1 鉄を取り出す実験
第14話 でぼにあん先生のおもしろ実験2 ガラスが涙になる実験
第15話 でぼにあん先生のおもしろ実験3 名前の通りの実験
COLUMN4 萌える実験室
CHAPTER5 巨大実験施設へゆく
第16話 新たな発電方法を研究する場所
第17話 ニュートリノをとらえる場所
COLUMN5 カミオカンデでおなかをこわす
CHAPTER6 特別編
第18話 マイクロピペットが生まれる場所
第19話 キムワイプが生まれる場所

 子どもの頃から理科が好きだったので、ビーカーとかリトマス試験紙とかの実験機器がどうやって作られているのかに興味津々! わくわくしながら一気に読んでしまいました。
「第2話 リトマス試験紙が生まれる場所」では、青色リトマス試験紙も赤色リトマス試験紙も染色液は同じ(!)という事実にびっくり。赤色リトマス紙のときは、染色液に酸性の液体を入れて色を変化させているそうです。……そうだったんだ。
 また「第4話 棒温度計が生まれる場所」では、棒温度計の製造方法がすごくよく分かりました。そのうち「温度目盛りの部分のみ」を抜粋して紹介すると次のような感じ。
4)灯油の注入((温度計になるガラス管を)着色した灯油に浸し真空にする。その後、真空を解除すると自動的に灯油が吸い上げられていく(温度計になる部分に赤い灯油が入っていく))
5)脱気(回転させることで赤い灯油部分から空気を抜く)
7)仮目盛決め(氷に差し、液体が下がりきったところに印をつける(0℃の基準をつくる))
9)目盛決め(先端を130℃にして100℃のところに印をつける)
10)先端の加工(加熱して封をすることで密閉する)
11)目盛の印刷)
  *
 また「第5話 pHメーターのふるさとへゆく」では、pHメーターでのpHの測り方は、水素イオンの数を測るのではなく「電圧」を測っていることを知りました。(なおpHとは、液体の酸性やアルカリ性の強さを0~14の数値で表したもの。この数値は液体中の水素イオンの量が関係しているそうです。)
 pHメーターの先端には「ガラス応答膜」と呼ばれる部分があり、ここはリチウム元素を含んだ特殊なガラスでできています。測りたい液体(試料)に入れると、水素イオンだけがガラス応答膜に向かって近づいてくるのですが、そのとき内と外の水素イオンの数の差で電圧差が発生します(試料の水素イオンが多いほど電圧差が高く、少ないほど電圧差が低くなります)。それを関係式にあてはめるとpHが分かるのだとか。……そうなんだ。
 さらに「第11話 貴重な実験器具が集まる場所」では、かつて使われていた古い分析機「ケーニッヒ製音響分析機」の実験方法がとても面白かったです。
1)炎をともす
2)音を鳴らす
3)音に反応し炎が揺れる(その音に反応して分析機の特定の共鳴管が振動し、炎が揺れる)
4)鏡を回転させる(鏡を回転させることで、連続した炎の像を映すことができる)
5)鏡に映った炎の形を(手書きで)記録する
 ……こんなふうに分析していたんですね。今の分析機に感謝!
 他にも「歴代の気象測器(カンベル・ストークス日照計、ロビンソン型風速計、精密型フォルタン水銀気圧計、毛髪湿度計など)」とか「駒場博物館(ダニエル湿度計、フーコーの回転鏡、メートル原器の模型、標準電池)」とか、古い機械のイラストも見ることが出来ました。
 さらに「第16話 新たな発電方法を研究する場所」では、次のような「核融合発電のすごいところ」を知ることが出来ました。
・燃料が海水(資源枯渇の心配がない)
・二酸化炭素が出ない(環境に優しい)
・暴走・爆発しない(安全性が高い)
「核融合発電」は、1)プラズマにした水素の中で核融合を起こす、2)発生させたエネルギーでタービンを回す、3)発電、というイメージだそうです。プラズマの制御などが難しいようで、まだ実用化には至っていないようですが、新しい発電として期待しています!
 この他にも、理科好きには面白い話題が満載☆ この本はもともと「子どもの科学」での連載をまとめたものなので、お子さんが読んでも楽しめると思います。(大人にも参考になる情報だと思います)。ぜひご家族で眺めてみてください。
   *    *    *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
<Amazon商品リンク>