『テック・ストレスから身を守る方法』2022/2/19
エリック・ペパー (著), リチャード・ハーヴェイ (著), & 3 その他
人間工学・心理学・精神生理学的に見て、テクノロジーは私たちにどんな影響を与えているのか……最新技術と共生しながら健康的に暮らしていく方法を、分かりやすく教えてくれる本です。
実は、「コンピュータで仕事をする北米人の30%以上が、年に1度は反復性緊張外傷(RSI)を発症します。」なのだとか。それなのに自分では意外に気づいていないようで、次のように書いてありました。
「我々の研究では、ほとんどの社員はコンピュータやタブレット端末の前に座っているとき、「自分の筋肉はリラックスしている」と思い込んでいることがわかりました。しかし実際の生理学的データは違う結果を示します。測定結果には、たいていの社員が仕事中、非常に高い筋緊張が記録されたのです。」
コンピュータ作業には、次の5つの注意点があるそうです。
1)人間工学的な要因は一部にすぎない(人間工学的アプローチ以外も考える)
2)人は普通、痛みを感じるまでは筋肉の緊張に気づかない
3)座りっぱなしは喫煙と同じく、生活習慣として好ましくない
4)身体の緊張には副作用がある(慢性的痛みになる可能性)
5)精神的ストレスも筋外傷の原因のひとつ
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ということで、この本は、ストレスから身を守り回復する方法について、精神的身体的な側面や人間工学的な側面からアドバイスしてくれます。
たとえば次の「ステップバイステップ・プログラム」を取り入れると、問題症状が大幅に改善されるそうです(本書内では、詳しく説明されています)。
1)自分自身にコミットメントする(人間工学的改善&体を動かす&リラックス)
2)身体の機能への「気づき」を深める
3)痛みを早期の警告として認識する
4)質の高い睡眠を優先する
5)身体を動かし積極的に活動する
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特に「短時間の休息をとる」「運動する」ことが効果的なようで、「お勧めの休憩プログラム」として次のことが推奨されていました。
1)異なる動作の複数作業を交互におこなう
2)ショートカットキーを使う
3)1秒間のマイクロブレイクをとる(タイピング中に両手をひざの上に置く、など)
4)1分間のストレッチ休憩をとる
5)立ち上がって動きまわる(トイレや休憩室に行く、階段を利用など)
6)環境を変える
7)1日30~40分の運動をする
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実は、「日中に身体を短時間でも頻繁に動かす方が、週末だけジムで数時間の運動をおこなうよりも有益である、と明らかになっている」そうです。
この他にも、ストレスとの対処について、次のような参考になるヒントをたくさん見つけることが出来ました。
・介護や子育て中でも、「自分のための時間をつくる」ことは、身体的なケアだけでなく、仕事や家族のストレスから気持ちを切り替えて自分に戻る大切な方法(自宅でできるエクササイズの方法を考えるなど)。
・解決策や回避策がないように見えたとしても自分をあわれんだり他人のせいにしたりせず、状況をリフレーミング(再構築)しながら、ある程度受け入れることを試みる(ストレスとなる仕事や課題自体は変えず、自分の置かれた状況を別の新しい方法で考えてみる)
・感謝をあらわすことを生活にとりいれると、相手も自分も幸せになれる
・過去の辛い記憶(無視やいじめ、暴行)への対処としては、状況を受け入れられるように努力する。自分自身が幸せになることが、最高のリベンジであることを忘れない。
・離婚問題にぶちあたったら、「自分の行動はコントロールできるけど、相手の行動はコントロールできない」と自分に言い聞かせる。
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さらに人間工学的な観点からの、「テック・ストレス」状況を改善するための具体的アドバイスもあります。
パソコン作業をして首や肩の痛みに悩まされている方は多いのではないかと思いますが、実は「うつむいて作業する」ことは、首や肩の筋肉に負荷をかけるだけでなく、テストステロンを減少させ、ストレスホルモン「コルチゾール」を増加させるなど、ホルモンバランスも変えているそうです。だからパソコン作業中に、ときどき姿勢を変えて背筋を伸ばすのは、とても大切なことのようです。
また、日頃から長時間パソコンなどのデスクワークをしている方は、そもそも「うつむいて作業」しないで済むよう、椅子や机などの環境を整備するようにするべきなのだとか。
・自分の身長にあった椅子と机が必要
・外部モニターに接続してタブレット端末を使う
・反射光によるグレア(まぶしさ)を減らすために、光源が画面の真横にくるようにモニターの位置を変える
・ノートパソコン用のスタンドと外付けキーボードを使う、などなど。
……これらについては、巻末に「健康的で効率的な作業のための16のヒント」として、イラスト付きで「良い座席位置」などの説明があります。
スマホ首や慢性的な肩こり・腰痛に悩んでいる方はもちろん、職場のメンタルヘルス対策を考えている方、医療・セラピーの専門家の方にも、とても参考になる情報がまとめてある本でした(ここで紹介したのは、内容のごくごく一部に過ぎません)。新奇な方法はあまりなく、ごく一般的に言われているアドバイスが多かったようにも思いますが、それだけに、むしろ安心して実行できる方法が多かったと思います。ぜひ読んでみてください☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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