『イラスト図解 遺伝子の不思議としくみ入門』2021/12/20
島田 祥輔 (著)
遺伝子の基本から、ココロとカラダの関係、病気、食、生命の不思議まで、遺伝子にまつわる謎をイラスト+文章で解説してくれる本です。
「(前略)私たちが遺伝子なしに生きていけないのは否定できない事実です。遺伝子によって心臓、脳、骨、筋肉が作られるだけでなく、食べ物を消化するための酵素、髪の毛の色となる色素、香りを感じるためのセンサーなど、私たちが元気に生きて感情豊かに暮らしていくために必要なカラダは、すべて遺伝子があるからこそ成り立っています。」
遺伝子は私たちにとって、とても重要なものですが、この本には知らなかったことがたくさん書いてあって、興味津々でどんどん読み進めてしまいました。
例えば、ゲノムを切り貼りすることで、「青いバラ」を作ることが出来るそうです。バラは赤と黄の色素を作る遺伝子をもっていますが、青の色素を作る遺伝子がありません。そこで青いパンジーから青の色素を作る遺伝子をバラのゲノムに組み込んで、青いバラを作ったのだとか。
この「ゲノム編集技術」は人間に使うこともできます。でも人間の遺伝子を変えることは、未知のリスクを伴う危険性があります。例えば、CCR5という遺伝子の機能をなくせば、エイズを引き起こすHIVというウイルスに感染しにくくなりますが、逆にインフルエンザウイルスに感染しやすくなることがわかっているそうです。
また次の話も知らなかったので、ちょっと驚いてしまいました。
「体温を上げすぎるとカラダを作るタンパク質が熱で壊れてしまうので、どんなに高くても42℃を超えることはまずありません。」
……42℃以上の高熱では、そもそも生きられないんですね……。
そしてさらに驚かされたのが、ブタの体内で臓器を作るという臓器移植方法の話。
「ブタの体内で臓器を丸ごと作り、そのまま患者に移植するという研究も進められています。まず、腎臓を作れないようにブタの遺伝子を変え、そのブタの受精卵を使います。そして受精してから数日後にヒトのiPS細胞などを注入します。ブタは腎臓を作れないため、そこを穴埋めするかのようにヒトのiPS細胞が代わりに腎臓を作る、というものです。ブタを使う理由は、臓器の大きさがヒトと同じくらいだからです。」
……うわー、そうなんだ……なんか複雑な気分ですが……。
そして次のような「新しい薬の開発」も進められているそうです。
「がんは細胞分裂に関わる遺伝子が変化しています。がん細胞の、どの遺伝子が変化したのかを調べ、そこから作られるタンパク質にピンポイントに作用する薬があれば、正常な細胞にはダメージを与えずにがん細胞だけを攻撃できます。」
これは素晴らしい方法ですね!
面白かったのが、ネス湖には本当にネッシーがいるのかをDNAで調べたという話。実は、「水中や土壌に含まれるDNAをまとめて解析して、そこに生息している生物を推定することが出来る。」そうです。ネス湖では、残念ながら巨大生物のDNAは見つからなかったようですが、ウナギのDNAがたくさん見つかったとか……もしかしたら巨大ウナギがネッシーの正体なのかも? この「環境DNAの分析」は生態学や微生物学で利用されているそうです。新しい発見がいろいろ期待できそうですね!
ゆるーいイラストと簡潔な文章で、「遺伝子の不思議」を多角的に解説してくれる本でした。もちろん「遺伝子の基本知識」の解説もありますし、ここで紹介した以外にも、さまざまな情報が満載です。
見開きページで1テーマという短い記事の集合という構成になっているので、暇な時にぱらぱら読むと、勉強にも気分転換にもなりそうです。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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