『いちばんやさしい建築基準法改訂2版』2020/12/3
基準法を考える設計者の会 (著)

 建築基準法を、読みやすい解説とイラスト図解で、総合的に説明してくれる本です。
 建築基準法というのは、「国民の生命・健康・財産の保護のため、公共の福祉の増進に資することを目的とし、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律」で、これを学ぶことで、どんな基準をクリアした建物かが分かり、どの土地にどれくらいの建物が建てられるかなどが正しく理解できるので、建築士の勉強している人以外にも、住宅を建てよう、購入しようとしている人にもメリットがあるそうです。目次を見ても、法律用語、敷地面積、建築面積、道路、用途制限、建ぺい率、高さ制限、自動車車庫、防火、避難、構造計算、採光、遮音などなど、建築に関するさまざまな内容がみっちり書いてありました。
 例えば、防火設備に関して、「防火扉」は火災の拡大を防ぐための防火設備だそうです。
「建築物を不燃材料等でつくり、耐火性能や防火性能を持たせたとしても、建物には必ず出入り口や窓が必要になります。
 これらは防火上、弱点になりやすいため、防火・耐火が必要とされる建物には、一定の遮炎性能を持つ扉や窓をつけることが義務づけられています。」
 防火設備(旧乙種防火戸)の場合は遮炎性能継続時間が20分、特定防火設備(旧甲種防火戸)の場合は遮炎性能継続時間が1時間、のように決められています。
 またマンションなどの耐火性能は、最上階から数える階数で耐火時間の規定に差があり、下の階ほど高い非損傷性が求められていました(上の階を支えなければいけない下層階の方が、長い時間耐えられるように決められているのです)。
 ……なるほど。たまにマンションで火災が起こったというニュースを見ると、その部屋だけが燃えていて隣の部屋へ延焼することが少ないのは、建築基準法で定められた防火基準を守って建てられているからなんですね……。
 また、マンション・アパートの界壁は、「原則として、各戸の界壁は小屋裏または天井裏まで達しなければならない(遮音だけでなく防火の観点からも、界壁を貫通するパイプ等に関する規定がある)」そうです。以下のように書いてありました。
「アパートの隣室から話し声が聞こえてきたという経験をお持ちの方もあると思います。プライバシー保護の観点などからその点を改善するため、基準法では共同住宅の隣戸に接した壁(界壁)は、遮音性能を有する壁にするという基準を設けています。要求される遮音性能は、低音・通常の音・高音と、3種類の音をある程度遮音するというものです。近年マンションのトラブルで最も多いのが上下階の音といわれていますが、残念ながら現在のところ上下階の遮音の基準はありません。ただし、実際のマンションでは遮音性能を有した床材や下地材を使用しているケースが多いです。」
 ……建築基準法は、私たちの生活を守るように定められているようです。
 この他にも、構造強度には2つの規定があるなど、いろいろ参考になる記事を読むことができました。
「地震や風などの外力、建物本体の重さ、建物内の人や家具などの重さに耐える建物をつくるためには、構造耐力上主要な部分に使われる材料と、その扱い方の技術的な基準を守ることが大切です。(仕様規定)
 中でもコンクリートや木材の質、基礎、腐食、腐朽または摩損等の耐久性にかかわる規定は大切です。
 それに加え、法規によって規定された計算法による構造計算の安全確認(構造計算の規定)が必要となります。この2つの規定はしっかりとかみ合わなければなりません。」
 図やイラストを使って、建築基準法を分かりやすく総合的に解説してくれる本でした。建築士を目指している方はもちろん、これから住宅やマンションの建築・購入を考えている方も、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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