『VRが変える これからの仕事図鑑』2019/8/21
赤津 慧 (著), 鳴海 拓志 (監修)
「VR+5G」で変わる仕事、変わる業界、変わる働き方、新しく生まれる仕事、稼げる仕事を教えてくれる本です。
この本では、VR(仮想現実)が変えていく仕事を紹介してくれます。VRとは、自分がまるで仮想世界にいるような感覚、没入感を体験できるもので、HMDを装着して体験するのが一般的です。このHMDで視覚と聴覚が制御され、強い没入感を実現しています。
似たような言葉にAR(拡張現実)とMR(複合現実)がありますが、ARの方は、現実世界を軸にしつつ現実世界を拡張する技術で、人気スマホアプリ「ポケモンGo」のようなイメージのものを言います。またMRは、現実世界と仮想世界をより密接に結びつけることでARよりリッチなコンテンツを提供できるもので、例えるなら「ポケモンGo」のキャラクターを撫でることができるイメージのものだそうです。
ユーチューバーならぬVチューバーも登場していて、2017年12月デビューした輝夜月(カグヤルナ)は、2018年8月に世界初のVRライブを開催。観客はVRデバイスを着けけ、観客自身もエビフライがモチーフのアバターになって、約1時間のライブを楽しんだそうです。
またVRはアメリカ軍でも、実戦形式のトレーニングに採用され始めていて、コスト削減などの効果が期待されているのだとか。さらにマイクロソフトも次のような動きを。
「2018年12月には、マイクロソフトが防衛・軍事分野に参入するというニュースが大きく報じられました。マイクロソフトは、現在「ホロレンズ」というMRデバイスを開始しています。「複合現実」ともよばれるMRは、現実と仮想の世界を融合させる技術のこと。ゴーグル上を通して見る現実世界にCGや仮想上の物体を重ね合わせることができるARよりも、さらに情報量の多いリッチな体験ができるようになっています。
たとえば、CGや仮想上の物体が見えるだけでなく、カメラやセンサーを通して近づいたり離れたり、さまざまな操作が可能になっているのです。ホロレンズが発表された当初に公開された、バイクの設計を行う動画には、世界中が驚かされました。(中略)
このホロレンズ、訓練での使用のみならず、実戦での活用も想定されているといいます。」
……うーん。何だか未来感がありますね。未来が現実になりつつある感じ……。
さらに産業界でも次のような動きが出始めているようです。
・自動車業界:VR試乗サービスなど(例:アウディは自社のディーラー内に「VRショールーム」設置。車種やカラーリング、搭載するオプションなどをVR上でチェックできる。「アウディが街中でどう映えるのか」も見ることができる)
・建築・不動産業界:VR上で設計。3Dデータと組み合わせることで、最終的なできあがりの部屋のイメージをVRで見てもらうなど。(見晴らしもリアルに再現できる)
・教育:VR語学スクール。空港や病院など、さまざまなVR状況で、語学のトレーニング。VR留学も。
・アパレル:自分の身体をデータに沿ってVR上でアバターで再現し、試着する。
……この中では、特に教育の語学トレーニングに興味があります。VRだと、間違うのがあまり恥ずかしくないし、実践的トレーニングがどんどん進みそう。
この他にもさまざまな業界でのVR利用が紹介されていました。VRは今後の仕事や社会を変えていく力が、確かにありそうです。
例えば中国では、鉄道警察が駅で顔認証メガネを使用し、7人の容疑者と身分証明書を偽造していた26人を特定したという事例がすでにあるようです。プライバシー問題も懸念されそうな感じですが……VRはこんな形で犯罪捜査にも役に立つんですね。
現在、仕事のオンライン化も進んでいますが、VRもどんどん進んでいくのでしょう。
ただ……個人的には、この本の冒頭で紹介されているVR会議は、通常の会議では不要ではないかなと思ってしまいました。VRだと電気代がかなり多額にかかりそうで、地球温暖化対策に逆行しそうです。
その一方で、語学や運動のトレーニング、自動車を含む機械の操作トレーニング、軍隊実践トレーニングなどでは、かなり有効に機能しそうな気がしますし、自動車や不動産などの超高額商品の場合は、事前にどんな商品かをVRで確認して買えるのはとても良いことだと思います。
今後、VR技術は私たちの社会・生活にどんどん浸透していくことでしょう。その時に、仕事がどう変わっていくか……ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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