『Newton大図鑑シリーズ 時間大図鑑』2021/7/31
田中真樹 (著), 原田知広 (著)
時間について、さまざまな側面から紹介してくれる『Newton大図鑑シリーズ 時間大図鑑』。Newtonらしい簡潔で分かりやすい文章と精緻なイラストで、時間のことを総合的に学ぶことができます。
直感的に分かりやすいのは、「時間は均一に流れる」とするニュートン時間ですが、現実には、「運動する時計の進みはゆっくりになる。運動が速くなるほど時間の遅れは大きくなり、高速に達すると時間が止まる」とするアインシュタインの相対性理論による時間の方が妥当のようです。
でも……「光速に近い速度で進む宇宙船の中では時間の進みが遅くなる」とか、「ブラックホールに近づくと時間が遅れる」とか言われると……それって本当なの? と思わずにいられません。
ところが現在では、速度や重力での時間の遅れが、現実に観測されているようです。次のような事実が紹介されていました。
・衛星の時計は地上の時間より速く進む(衛星の電子時計が1日あたり38.6マイクロ秒速く進む。この間に、電波は約11キロメートル進む)。このため衛星の時計は遅く進むように補正されている。
・地球の重力でも時間は遅れる(標高が高いほど時計の進みが速くなる)
・火星探査機でも時間の遅れが観測された。
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またタイムトラベルについても、さまざまな説(ブラックホールや、超高密度の球状の殻を利用するなど)を知ることができました。驚いたのは、「自然界でもタイムトラベルのような現象が発生している」ということ! 次のように書いてありました。
「宇宙線(宇宙由来の放射線)が大気にぶつかると「ミューオン」という素粒子が発生する。ミューオンは本来、100万分の2秒ほどでほかの素粒子に変化してしまう。
発生したミューオンは光速に近い速度で進む。大気の上層で発生したミューオンは、約1キロメートルしか進めずに崩壊してしまうはずだ。しかしその速度のため、時間の流れが遅くなって寿命がのび、10数キロメートル~数百キロメートル進んで地上へと到達するのだ。」
……マジですか……。
そして最も興味深かったのは、「5 時計と暦」。「1年の長さは少しずつ短くなっている」そうです。
「1年の実際の長さは365.2422日ではあるが、ごくわずかずつ、100年に0.53秒ほどのペースで短くなっている。」
地球は太陽のまわりを楕円軌道で回っていますが、厳密には、ほかの惑星の重力の影響を受けて軌道が乱れ、楕円軌道から少しずつ円軌道に近づいて、太陽からの平均距離が短くなります。その結果、1年の長さがわずかに短くなるのだとか……。
また「1日はだんだん伸びている」そうです。
「月の引力の影響(潮汐摩擦)や、風の動き、自身、マントルと核の摩擦などさまざまな要因で自転速度(1日の長さ)はかわる。」と書いてありました。
そして「14億年前1日は18時間だった?」と推定されているそうです。
「現在、地球が1回転するのにかかる時間、つまり「1日」は約24時間である。ところが、過去にさかのぼると、地球の自転速度は今よりもはるかに速く、1日の長さも24時間よりも短かったことがわかっている。」
二枚貝やサンゴの化石に刻まれた年輪を見ると、その当時、1年が何日だったかが分かるそうです。
さらに「生きものの時間」では、生物の体内時計などについても詳しく教えてもらえました。私たち生物は、太陽がいつ上りいつ沈むのかを予測するのが大切だったので、進化の過程で体内時計の能力を獲得したそうです。
この章では、「体内時計の乱れはさまざまな病気につながる」など、健康に関わることも知ることができました。例えば「末梢時計は食事でずれる」そうです。次のように書いてありました。
「食事をすると、胃や肝臓の末梢時計が進むという。朝食を食べたり、夜10時以降の食事をさけるなども、体内時計を正常に保つために有効だ。このように、末梢時計が中枢時計に影響を及ぼすこともある。
体内時計の乱れは、メタボリック症候群や心筋梗塞、年をとってからの認知症のリスクを高めることがわかっている。体内時計を正しく保つことは、私たちの健康な生活に非常に重要なのである。」
なるほど……体内時計を正しく保つよう心掛けたいと思います。
「絶対時間」「相対的な時間」「タイムトラベル」「時間のはじまりと終わり」「時計と暦」「生きものの時間」というさまざまな観点から、時間のことを総合的に解説してくれる『Newton大図鑑シリーズ 時間大図鑑』。巻末には基本用語解説もあって、知識の更新や再整理にとても役立つと思います。ぜひ読んでみてください。
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