『This is Lean 「リソース」にとらわれずチームを変える新時代のリーン・マネジメント』2021/3/15
二クラス・モーディグ (著), パール・オールストローム (著)
組織・チームを真の効率化へと導くにはどうすればよいか? 「フロー効率」という視点を導入することで、組織とチームを圧倒的に「リーン」にする方法を紹介している本です。
なお「リーン」とは、素早くやる、少人数でやる、低予算でやる、失敗を許容するなど、いろいろな意味で使われているようですが、具体的なものとしては、トヨタのシステムなどが「リーン」システムの一例です。
さて本書の「プロローグ 五〇〇倍のスピード」は、乳癌かもしれないと心配する二人の女性のケースから始まります。アリソンの場合は、最初の診察から最終的な診断まで四二日が必要でしたが、サラの場合は、ワンストップ乳腺クリニックで最初に看護師に迎え入れられてから診断を告げられるまで、なんと二時間しかかからなかったのです。
このアリソンのケースは「リソース効率重視の医療システムで診断」した例で、サラのケースは「フロー効率(ニーズを満たす)重視の医療システムで診断」した例でした。
実は、「効率化」を考える場合、多くの企業はリソース効率を重視しがちなのだそうです。
でもリソース効率を重視すると、顧客を待たせることになり、顧客に不満を抱かれるだけでなく、余計な仕事(連絡、再スケジュール、リスタートの段取り)を増やすことにもなります。だから、これはまったく「リーン」ではありません。
ではリーンであるためには何をしたらいいのでしょうか。それは次の5つだそうです。
1)最終顧客の視点から価値を決める
2)価値の流れを理解し、価値をもたらさないステップのすべてをなくす
3)顧客までの製品のフローを円滑にするために、価値を生むステップの流れを良くする
4)フローが確立したら、顧客のリクエストを起点に、下流から上流工程へと価値の流れを動かしていく
5)ステップ1からステップ4までが終わったら、プロセスを最初から繰り返し、無駄のない完全な価値を作り出す完璧な状態になるまで続ける
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ちなみに「リーン」なトヨタには、次の4つのルールがあるそうです。
1)すべての作業は、内容、順序、タイミング、結果の点で極めて具体的でなければならない
2)顧客とサプライヤーは例外なく直接つながっていなければならず、要求を送ったり、応答を受け取ったりする際には誤解しようのない「イエス」か「ノー」を用いる
3)すべての製品とサービスの経路は単純で直接でなければならない
4)ありとあらゆる改善は、科学的手法を用いて、指導者の指揮の下、組織内の可能な限り低い階層で行われなければならない。
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……さすがトヨタ。これを遵守していれば、「余計な仕事」を最小限に抑えられそうです。
他にもたくさんの解説や具体例があり、とても参考になりました。
でも「リーン」な組織に変わるのは容易なことではありません。「エピローグ」で、モーディグさんも次のように言っていました。
「リソース効率中心の組織をフロー効率重視の組織に変えるには、組織構成、管理体制、報奨形態、キャリア構成、採用プロセスなど、さまざまなレベルでの解決が不可欠だ。手短で簡単な方法など存在しない。組織全体としてリソース効率からフロー効率へ重心を移し、全従業員がフローを改善する方法をつねに考えている状態をつくるには、強靭なリーダーシップが欠かせない。」
顧客志向になることが、リーンの本筋であり真の効率化へと至る道……自分の組織・チームをより良い方向へ導きたいと考えている方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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