『図解 不祥事の社内調査がわかる本』2020/12/4
プロアクト法律事務所 (著), 竹内 朗 (編集), 大野 徹也 (編集)
不祥事に直面した企業が行う「社内調査」に焦点を当て、プロアクト法律事務所が蓄積した知見・経験をもとに実務目線でノウハウを解説してくれる本です。
「第1章総論」「01不祥事対応のサイクルと社内調査の位置づけ」には、次のように書いてありました。
「不祥事対応は、「平時のリスク管理」である発生前の「予防」と発生後の「発見」、そして「有事の危機管理」である「事実調査」「原因究明」「再発防止」というプロセスによって構成されます。」
「有事の危機管理における事実調査は、その多くが社内調査の形をとります。社内調査のスキルを高めることは、有事の危機管理のスキルを高めることに直結します。」
「社内調査は「初動調査」と「本格調査」とに分けられます。「初動調査」とは不祥事の存否や概要を短時間でおおまかに把握する調査です。(中略)「本格調査」とは、不祥事の全容や原因を相応の時間をかけて解明するための調査です。」
また調査手法には、次のようなものがあるそうです。
・客観的資料・データの検証(書類・帳票・帳簿やデータなど)
・デジタルフォレンジック(PCやサーバーのメールやデータから不正の証拠を発見)
・関係者ヒアリング
・アンケート調査
・ホットライン(内部通報窓口)の設置
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そして客観的証拠になるものとして、次のようなものを「保全・収集→検証→補完」するそうです。
1)ルール:法令、社内規則・マニュアル
2)組織の意思決定:議事録、議事メモ、議事録音、付議資料、稟議・決済資料、契約書、発注書、請書
3)人同士のコミュニケーション:メール、SNS、チャット、報告書、名詞
4)人の行動:日報、入退館記録、ETC、経費精算記録、手帳、日記、ノート類、ファイル、システムログ等のデジタルデータ
5)資金の移動:伝票、請求書、領収書、預金通帳、証券口座
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この本は、不祥事の社内調査について、総合的に分かりやすく解説してくれます。
最後の「第10章不正行為の類型別の留意点」では、次のようなケースごとに実例を使った解説もあるので、どんな場合にどのように調査するかを具体的にイメージしやすいと思います。
・「架空取引、キックバック」
・「各種ハラスメント」
・「データ漏えい、情報セキュリティ事故」
・「会計不正、有価証券報告書虚偽記載」
・「品質不正、検査データ偽装」
・「外国公務員贈賄」
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会社で起きた大規模な不祥事が表面化し、企業価値を大きく毀損する事例が後を絶ちません。不祥事の存在やその端緒を把握した企業が必ず行うのが「社内調査」。的確な社内調査を行うことができれば、その後の対応も円滑に進められるのだとか。
不祥事が起きないよう予防するのが一番ですが、万が一起きてしまった時に慌てて間違った対処をして傷を深めてしまわないよう、社内調査のスキルを向上させるための努力をしておくべきなのでしょう。それが、その後の経営判断と対応措置の品質向上、すなわち不祥事対応そのもののレベル向上にも、つながっていくのだと思います。ぜひ一度、読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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