『図解即戦力 AIエンジニアの実務と知識がこれ1冊でしっかりわかる教科書』2021/2/10
AIエンジニア研究会 (著)

 AIエンジニアの業界知識、業務内容、必要な知識、心構えなどについて概要を解説してくれる本で、内容は次の通りです。(なお、本書におけるAIエンジニアは、「AIモデルを利用したシステムを構築するAI開発者」のことです。)
1章 AI業界の現状と基礎知識
2章 AIエンジニアの仕事と仕組み
3章 AIエンジニアの求人状況と働き方
4章 AIエンジニアになるには
5章 AIシステムの概要
6章 AIモデルの構築とPoC
7章 AIシステムを作る
8章 AIシステムの運用
9章 AIエンジニアになったら
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 AIシステム開発の全体像は、次の4つの工程が一般的なようです。
1)アセスメント(どんなデータを使って、何を解決するかについて、顧客から合意を得る)
2)PoC(PoC=概念実証:AIモデルを作成し、精度が出るか検証)
3)設計・開発(AIモデルをシステムに連結)
4)運用・保守(状況に応じて再学習し、精度を維持する)
 このうち最も時間がかかるのはPoCで、AIモデルの作成は次の工程になります。
1)予測や分析するデータを集める
2)AIモデルにデータを当てはめる
3)精度を確認する
4)精度を上げるべく改善
4―1)学習データの作成方法(ラベル付けなど)を変える
4―2)収集するデータ自体を変える
4―3)AIモデルのパラメータを変える
4―4)AIモデルのアルゴリズム自体を変える

 AIエンジニアは、昨今のAI分野の発展とともにニーズが高まっています。高度な知識が求められることと、速い技術進展スピードに追随していく必要性があることから、敷居の高い職種で、人手不足の状況が続いていますが、間違いなく、今後最も発展が見込める有望な職種だと思われます(AIエンジニアの年収は400~500万円が多く、一般のITエンジニアよりも給与水準が高いようです)。
 この本は、AIエンジニアを目指す学生、またキャリアアップを考えているエンジニアの方を対象に、AIエンジニアの実務と知識の概要を教えてくれます。……とは言っても、「知識」の方は、「どんな知識が必要か」の分野を教えてくれるだけですが……。
 AIスキルに必要な基礎知識としては、「確率や統計の知識」、「データの整理と可視化、評価の知識(ROC曲線やAUC)」、「Pythonの基礎知識、NumPy、Scikit-learnなどのライブラリ」の他、Webやクラウドの知識などだそうです。
 現在のところ、AIシステムの実績自体が多くないせいか、「AIエンジニアに必須の資格はない」状況だそうです。ただしJDLA(日本ディープラーニング協会)が実施する「G検定(AIに関わるすべての人を対象にした一般向け検定)」と「E資格(エンジニア向け上級資格)」の2つがあるそうなので、これら受験するための勉強をすると、AIの基礎知識を身に付けられるのではないでしょうか。
 この他にも、「AIエンジニアの1日」の事例3つなど、とても参考になる情報がありました。「AIエンジニアの仕事」は、次のように「トライ&エラーをくり返してプロジェクトを進める」という特徴があるそうです。
「AIシステムと従来の業務システムとの大きな違いは、課題解決の方法に決まった正解がなく、やってみないとわからないことです。運用後であっても精度が悪化すれば、原因を追究して改善を続けます。」
 ……従来の業務システムとは、かなり違ったシステム開発を求められるんですね。
 今後、有望視されている職業の一つ、AIエンジニアの仕事を総合的に紹介してくれる本でした。AIエンジニアをめざしている方は、読んでみてください。(なお、すでにAIエンジニアをしている方にとっては、あまり目新しい情報はないと思いますが、他の人に自分の仕事を紹介(説明)するときの参考資料として使えると思います。)
 AIシステムは技術革新が激しい分野ですので、この本も内容がどんどん変わっていくと思われます。購入の際は、最新版かどうかを、ぜひご確認ください。
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