『人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった(上)』2020/11/17
グラハム・ハンコック (著), 大地 舜 (翻訳), 榊原 美奈子 (翻訳)
『人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった(下)』2020/11/17
グラハム・ハンコック (著), 大地 舜 (翻訳), 榊原 美奈子 (翻訳)
北アメリカのサーペントマウンド(大蛇の古墳)とエジプトの大ピラミッドは、同じ思想で設計されている……考古学上の新発見から最先端の遺伝子分析の結果まで、様々な知見をもとに「人類史の謎」を探求している本です。
人類史の謎を追求する旅は、オハイオ州にある大蛇型の墳丘「サーペントマウンド」から始まります。この謎の遺跡を遺した人々は誰だったのか? そして、最初にアメリカ大陸に到達した人々は誰だったのか?
アメリカ大陸に人が住み始めてからまだ4000年も経っていないというのが常識と考えられてきましたが、このサーペントマウンドは、紀元前1万1000年頃に建造された可能性が強まってきているそうです。
これを作った人はいつ、どこからアメリカに来たのか? その謎を追ってハンコックさんたちは、シベリア奥地へ進みます。アメリカ先住民の祖先が、絶滅したデニソワ人(シベリア)と異種交配していることが、DNA研究で判明したからです。
このデニソワ人のDNAが、遠く離れた北米大陸、さらには南米のアマゾン奥地やオーストラリアのアボリジニにまで見つかる謎を追い、ハンコックさんたちは再び海を越え、今度はアマゾンの熱帯雨林へと踏み込みます。
そこで見つかったのは、アマゾンそのものが、土壌や植生に至るまで、人の手によって生み出されたものだという衝撃の事実。さらに巨大構造物や、幻覚性植物の使用、遠くアマゾンと北米大陸や古代エジプトにまで共通する幾何学のモチーフや伝承……これらは、背後に何らかの先史文明が存在したことの証拠ではないか……ハンコックさんは追及していきます。
次第に浮かび上がってきたのが、「約1万2800年前に地球に降り注いだヤンガードリアス彗星が引き起こした、地球規模の大災害」。
北米のサーペントマウンドと同じような遺跡が、南北アメリカ大陸から旧世界(ユーラシア大陸)やオーストララシア(オーストラリアからニューギニアにかけての領域)で次々と発見されているそうです。大洋を渡って広がっていった先史文明が、今は消えてしまっているように見えるのは、この「天からの災厄」に原因があるのではないか。遺跡に残された痕跡や、かろうじて生き延びた人々が我々の先祖に伝えた伝承が、遥か遠く離れたエジプトと北米大陸で同じように伝えられてきたのではないか……まるでミステリー小説みたいに、次々と謎が解き明かされていきます。
とても面白かったのですが……正直に言って、読み終えた今でも半信半疑状態です(汗)。科学的研究に基づいた「人類以前の文明」の存在を示す新証拠が次々と繰り出されてはきますが、今までの歴史の常識を覆すものが多いだけでなく、考古学的な超古代に失われたものの痕跡なので当然ながら明確なものではなく、本当だろうか……と疑いを抱かずにはいられませんでした。
でも、とても面白い話でもありました。まさに『人類前史』。古代文明の前に存在した文明が、約1万2800年前に彗星が引き起こした地球規模の大災害で失われた……これが本当だとしたら、数多くの謎が一気に解明されるのですから。
例えば「オーパーツ」。発見された場所や時代にそぐわないほど高度な技術が使われている「ありえない工芸品」は、超古代文明があったと考えれば、それだけで解明しますよね(笑)。この本でも、上巻の「付録2 氷河期の古地図」で、「ヴァルトゼーミュラーの世界地図」は、「(氷河期の地形が描かれた)失われた古い原典」から書き写したものに、コロンブス以降の航海で判明した情報を組み込んだものではないか、と想像しています。
こういう本を読むと、超古代へのロマンが広がって、なんだか楽しくなります。でも、とりあえず今のところは、「眉唾もの」に分類しておこうかな……。
それでも「常識」はいつまでも「常識」ではないのかもしれない、という気持ちは忘れないでいたいとも思っています。科学的に信頼できる情報が積みあがってきたら、それまでの知識を更新していくのが、真に合理的な態度だと思っているので。
荒唐無稽感はありましたが、とても興味深い『人類前史』を探求している本でした。地球の地形も気候も不変ではなく、ダイナミックに変動しているので、現在の定説である「アフリカから始まった人類の世界への拡散ルート」も、当時の地形や気候がより詳細に推定されていくのに伴って変動していくに違いありません。もしかしたらDNAから解析することが、逆に当時の地形や気候を推定するのに役に立つかも。約1万2800年前に、すでにアメリカ大陸に巨大遺跡を建造できるほどの文明があったのかについても、これからまた新たな証拠や考え方が出てくることでしょう。興味のある方は、読んでみてください。
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