『新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)』2020/4/11
岩田 健太郎 (著)

 新型コロナウイルスの正体と感染対策を、具体的に分かりやすく解説してくれる本です。
 2021年1月現在、新型コロナウイルスによる感染者や重症者がどんどん増加していて、医療崩壊も間近だと言われているなか、風邪をひくのすら怖いと不安になっていました(風邪なのか新型コロナなのか、素人には判断がつかないから)。
 そんななか、この本を読んだことで、少しだけ安心できました。というのも、「症状が軽い人は病院に行かず、自宅療養する」のが良いと書いてあったからです。実は新型コロナについては、「症状が軽い人に対して病院が出来る治療法がそもそもない」ので、「病院に行かない方が二次感染を広げない」そうです。そうなんだ……風邪かも、という程度の症状でも病院に行って新型コロナの検査を受けないと非国民扱いされるのかと思っていました……。
「第二章 あなたができる感染症対策のイロハ」には、次のような対処法が具体的に紹介されていました(本書の中ではもっと詳しく説明されています)。
・ウイルスがどこにいるかわからないなら、どこでもいると考えて、感染経路ブロックのために手指を消毒する。
・病院に行くとき、咳やくしゃみがあるならマスクをする。
・家族がコロナになったら、こまめに手指の消毒、患者はマスクをつけ部屋の換気をよくする、患者の服は熱湯に5分漬けた後に普通に洗濯する。
 などなど。なお「免疫力はアップさせるのではなく、バランスをよくすることが大事。そのための方法は、休養、睡眠、適度な運動、食事栄養のバランス」とか、「無症状の場合は、基本的に周りにうつす心配はない」などの情報も、とても参考になりました(これらの対処法はこの本の出された2020年4月時点でのものですが、おそらく現在(2021年1月)でも有効だと思います。)
 また、このような「新しい感染症」などに対処するためには、常に正しい情報を得るよう努力するのが大切だということで、そのための情報源としては、「厚生労働省のウェブサイト(そこから応用として関連する学会のページ)」などが推奨されていました。
 なお、本書の「第三章 ダイヤモンド・プリンセスで起こっていたこと」では、岩田さんが現場で体験したさまざまな問題点が、驚くほど率直に書いてあって、(こんなにはっきり言って大丈夫なのかなあ……)と心配になってしまうほどでしたが、このように現状の問題を明らかにしてくれる人がいると、今後の日本の感染症対策などが良くなっていくと思いますので、以下に少しだけ紹介させていただきます。
・日本にはCDCがない(責任を持って意思決定する感染症の専門家集団がない。情報公開も行われず、意思決定のプロセスや担当者・担当業務が不透明)
・PCR検査の紙の同意書が必要(感染のもとになる)
・PPE(個人防護具)の脱ぎ方の訓練をしていない(下手な脱ぎ方は感染のもとになる)
・ゾーニングが完全でない
・一生懸命が求められ、担当者が休める環境にない(休めないと疲労のあまり対処を間違う可能性がある)
 なお、「第四章 新型コロナウイルスで日本社会は変わるか」では、次のようにも言っています。
「日本の感染対策が目指すところは間違っていないし、全体的にはうまくいっているとぼくは考えています。」
 いずれにせよ、今回の新型コロナウイルス体験が、日本の社会をより良い方向に変えるきっかけになることを願いたいと思います。
 さて、「ウイルスは変異する」のが当たり前なので、今回の新型コロナウイルスがいったん収束したとしても、次の感染症がいつか襲って来ることは間違いないでしょう。今は新型コロナウイルスが収束して「安心」したい気持ちでいっぱいですが、「安心」できる日が来ることはなく、その都度、新しい感染症に、最新の知見をもとに最良の対策をするよう努力していかなければならないのだと思います。岩田さんも「第五章 どんな感染症にも向き合える心構えとは」で、次のように言っています。
「本来は「安全」を目指して、しっかり治療して病気を治すことが大切です。治療には時間がかかるかもしれないけれど、病気が治れば痛みもなくなる。
 しかし「安心」という間違った概念を求めると、つまり現実に存在するリスクをほったらかしにして気分だけ良くしようとすると、病気はどんどん進行していきます。(中略)
 だから、安心を求めてはいけない。「安心なんて幻想だ」ということをしっかり理解することが大切になります。
 求めるべきは、安全だけです。「こうやったら感染は防げる」「こうやったら防げない」という線引きをちゃんとして、そのとおりに行動する。やるべきことはそれだけなんですよ。
 不安に思うべきところは、不安なままでいいんです。不安にならなきゃいけないシチュエーションで麻薬を打って安心したら、より危険になるんです。」
 新型コロナウイルスなどの感染症に、どう向き合えばいいのかを教えて(考えさせて)くれる本でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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