『最新科学が映し出す火山 その成り立ちから火山災害の防災、富士山大噴火』2020/10/27
萬年一剛 (著)

 火山噴火の仕組みから噴火の予知、火山のもたらす恵み、噴火災害などを最新科学の知見を交えて教えてくれる本です。
「第1章 マグマの生成」では、地球の構造やマントル、マグマなどについての解説を読むことができました。「火山とはマグマが地表にでてくるところ」で、「マグマのふるさとは地殻のしたにあるマントル」なのだそうです。
 そしてこの火山活動は、プレート沈み込み帯で多く起こっているのですが、その理由について私が知っていた知識は、すでに古くなっていたことを知りました。この本では、次のように言っています。
「沈み込み帯の火山活動は、多くの場合、沈み込むプレートが水を供給することによって、マントルが部分溶融して、マグマが生じるという考え方でほぼコンセンサスがとれていると思います。(中略)ところで、古い本を読むと、沈み込み帯でマグマが生じるのは、沈み込むプレートとマントルとの間で、摩擦が生じて温度が上がるからだという説明があります。というか、いまだに一部の地理の教科書では堂々とこんな説明がされているのですが、今、プロの火山学者でそのようなことを信じている人を私は知りません。」
 ……プレートの沈み込みの摩擦熱でマントルが融けてマグマが出来るんじゃなかったんですね! 水が入り込むからだったんだ……。
 この本は、こんな感じで火山に関する最新の知識を詳しく教えてくれます。しかも説明がとても「科学的」なので、とても説得力があり勉強になります。
 続く「第2章 噴火はなぜ起きる?」、「第3章 火山岩の種類・でき方・性質」、「第4章 噴火いろいろ」も説明が詳しくて、なるほど火山って、そういう状況になって噴火していたんだーととても納得させられました。
 そして一番興味津々だったのは、「第5章 噴火の予知と火山学者の役割」と「第7章 火山災害を防ぐ」……だったのですが、残念ながら現在のところ、「噴火予知」はまだ不可能のようです。
 それでも、GNSSによる地殻変動を観測の他、傾斜計、InSARなどによる計測で、火山噴火の予兆や仕組みに迫ろうと努力しているようです。こうした計測機器の活用で、噴火の予兆をいち早く捉えて、噴火の被害をできるだけ軽減できるようになると良いですね!
 さらに「第6章 火山の恵み 温泉と鉱床」では、火山の熱が多くの鉱床を生み出してきたことなど、火山の恵みを知ることが出来ました。
 そして最終章「第8章 富士山で大噴火が起きたら?」では、日本では、「非常に大規模な噴火」は過去100年近く、また「大規模な噴火」も40年以上にわたって発生していないことについて、次のように書いてありました。
「このような長期間にわたって大規模な噴火が発生しないのは珍しく、21世紀もこのような状況が続くと楽観的に考えるのは危険があります。」
 ……今後も出来れば大規模な噴火は起こって欲しくありませんが、次の大規模噴火発生までには、科学技術の発展などによって火山の仕組みの解明が進み、噴火予兆を捉えて、予め広域避難が出来るようになるなど、減災につながっていくことを願っています。
 火山について総合的に学べる本でした。火山に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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