『ぶっ飛び! 科学教室: 科学オタクが贈る とっておきのネタと実験』2020/8/25
ヘレン・アーニー (著), スティーブ・モールド (著)

 イギリスでサイエンス・ライブを主催する人気のアーニーさんとモールドさんが、自分の体や身の回りにあるもので簡単にできる実験や、気になる面白科学ネタをたくさん紹介してくれる本です。
 科学ネタも面白くて勉強になりますが、文章の方もユーモアたっぷりで、すごく楽しい☆ さすがイギリス人、知的なユーモアが随所に炸裂していて、いろんな意味で参考になります。
 例えば、「3.脳の科学あれこれ」では「黒い縦じまの中に描かれた模様が見える」理由を、次のように説明しています。
「左の画像の中央にある白い点を集中して見つめると、黒い縦棒しか見えなくなる。だけどその状態でも、顔を左右に振れば、棒の間に隠された絵が見えるようになるはずだ。(中略)
 この効果の原因は、視覚系の2種類のニューロン、P細胞(小細胞)とM細胞(大細胞)にある。P細胞は、例えば黒い棒の縁のような、細かい特徴を区別するのに長けている(空間分解能が高い)。しかし、すばやい動きに対処するのは不得手で(時間分解能が低い)、コントラストが弱い部分の処理も苦手なんだ。一方、M細胞は、詳細な処理は不得手だけど(空間分解能が低い)、速い動きには対応できるし(時間分解能が高い)、コントラストが弱い部分の処理もできる。
 つまり、白い点に視線を集中させるとP細胞が優位になるので、見えるのが黒い縦棒だけになる。だが頭を振るとM細胞が優位になるので、下に隠れている薄くて縁がはっきりしない画像を広い出せるようになるんだ。」
 なるほど、錯視はこんな仕組みで起こるものもあるんですね。
 すごく楽しめたのが「2.食卓の科学あれこれ」の「麺でイチャイチャ」。ディナーのための料理を作っているときに、ターメリックで色をつけようと思っていた「米」がないことに気づき、しかたなく「中華麺」で代用してしまったら、きれいな黄色にならずに血の赤に染まってしまった……という大惨事に、著者たちは「科学実験」を始めてしまうのです。
 グーグルで検索したところ、ターメリックにはクルクミンという化学物質が含まれていて、そのクルクミンは天然のpH指示薬だそうで、お米はわずかに酸性なので黄色になるのですが、中華麺には味をよくするため炭酸カリウム(金属塩)が含まれていてアルカリ性だから赤く変化してしまったのだとか……さすが科学者、失敗からも何かをつかみ取る、ど根性に敬服(笑)。こういう人、すごく好きだなー。(このエピソードの記述はすごくユーモラスで必見です☆)
 また、7歳の時に、ポリエステル製のパジャマを着てもぞもぞすると、布団の下の暗闇に、ほんの小さな一瞬の光がいくつも見えてパチパチッというかすかな音がすることに気づいたのをきっかけに科学に夢中になった、といいうエピソードにも、「うーん、分かる分かる」と大きく頷いてしまいました(笑)。
 さらに「6.宇宙の科学あれこれ」には、次のような記述が。
「あなたが組み立て式のイケアのベッドに寝転んで、この本を読みながらうとうとしているあいだに、地球は1週23時間56分4.1秒のペースで地軸のまわりを回転しているの。もし幸運にもベッドが赤道上にあるとすれば、1時間に約1700キロメートルの速さで動いていることになるのよ。北極か南極に近づけば、速度は落ちるわ。」
「銀河の中央部には、星々が集まってできた巨大な円盤があり、何本もの渦上の腕がその周りを旋回している。地球があるのはそのうちの1本の腕の中なの。そして地球は、銀河系の中心を、時速83万キロメートル、秒速では230キロメートルというとてつもない速さで回転しているのよ。稲妻の2倍くらいの速さね。」
 ……1時間に約1700キロメートルの速さ+稲妻の2倍くらいの速さ!
 私たちみんなが、そんな高速で動いていたんだ!
 ……ふーん。なんか疲れちゃったな……みんながそんな速さで動いているなら……一人ぐらい、だらだらしていてもいいよね……ってことで……おやすみなさい(zzz)。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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