『未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること (講談社現代新書)』2019/6/19
河合 雅司 (著)

 47都道府県はもはや、維持できない。2045年には人口8割減の市町村も……20年後の日本人の生活をそう予測した上で、未来への提言をしている本です。
 直近のデータをもとに、2015年から2045年の30年間に人口がどう変化するかを予測しているのですが……少子高齢化が進むので、東京などごく一部の地域を除くと日本中ほぼ「人口減」になるのだとか! 各地の人口がどのように推移するのかを詳しく予測していて、その説明がすごく現実的で説得力がありました。
 これを見ると、うーん、どうしたらいいんだろ……と、どうしても悲観的になってしまいますが、「はじめに」には、次のようにありました。
「いま、わが国に求められているのは、人口減少を前提として、それでも「豊かさ」を維持できるよう産業構造をシフトさせていくことであり、国民生活が極度の不自由に陥らぬよう社会システムを根本から作り替えていくことである。」
「「戦略的に縮む」には、「国土の均衡ある発展」から路線転換し、「拠点型国家」へと移行する必要がある。地図に落とし込めば点描画となるような「ドット型国家」への移行だ。」
 ……確かに。「人口減」はほぼ確実に訪れてくると予想できるので、それでも私たちの生活が破綻しない方法を考え、実行していく必要があると思います。河合さんも次のように言っています。
「拡大路線による過去の成功モデルで東京が日本の経済成長をなんとか牽引しているうちに、人口減少が続く地方の社会基盤を、人口が減ってもやっていけるように根本から作り直すのだ。」
 そして、この本の素晴らしいところは、「どうすればいいか」の提言もしてくれているところ。
「令和時代に求められる5つの視点」
1)拠点という「王国」を作る(人を中心に「賑わい」を作る。ICT活用。住民の助け合い。手本:イタリアのソロメオ村)
2)基礎自治体の単位を都道府県とする(市町村運営は行き詰まる)
3)働くことに対する価値観を見直す(ワークシェアリング。手本:オランダ)
4)「在宅医療・介護」から転換する(元気なうちから高齢者は集まり住んでおく)
5)東京圏そのものを「特区」とする。(「巨大都市国家」として海外と競争。成長分野の集積エリアを作り、大胆な規制緩和。通信インフラを含めた基礎整備)
 この他にも、「空港、道の駅、SAの周辺に街をつくる」とか「大型ショッピングモール周辺に街をつくる」など、さまざまの提案がありました。
 少子高齢化が進む今後の社会は、おそらく「首都圏」と「地方中核都市」への人口集中が進むのではないかと思います。その理由は、子どもに負担をかけたくない(あるいは子どもがいない)高齢者たちの「体が不自由になる前に病院や福祉施設の整った便利な環境へ移住しよう」という動機付けが、さらに強まると思うからです。この本でも、次のように予想されていました。
「東京の都心部への集中以上に、地方圏では各県庁所在地の便利な市街地への人口集中が進む。」
 高齢者の比率が高まる日本で、私たちの生活を守るためにどうすればいいのか、真剣に考えていかなければならないのでしょう。どう対処していけばいいのかを考えるために、どこかにモデル都市を設定して調査・試行・分析すべきではないでしょうか。この本には、次のような記述がありました。
「福生市や青梅市は高齢化がより早く進むので、「2065年の日本全体の高齢社会の風景」を30年も早く見ることができる。(中略)この変遷の中で起こる課題について分析することは、今後の地方都市の街づくりやビジネスに大いに役立つだろう。」
 現実的に考えると、予想されているような「首都圏」「地方都市」への人口集中はむしろ効率的なのではないかと思います。農地や工場を機械化するなどして、人口の大半が「都市で生活」していても、産業が破綻しない方策を実現していくべきなのではないでしょうか。
 これからの日本を考えていく上で、とても参考になる本だと思います。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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