『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養』2018/4/27
デイヴィッド・S・キダー (著), & 2 その他
「1日1ページ読むと教養が身につく」本です。
(月)歴史・(火)文学・(水)芸術・(木)科学・(金)音楽・(土)哲学・(日)宗教の7分野から、教養を高める知識を364日分収録されています。(365日分となっていますが、記事は364個でした。)
『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』というタイトルから、「世界の名著のエッセンスをざっと知ることができる」美味しい本なのでは? と期待したのですが……それは甘過ぎでした(苦笑)。もっとも本当の「教養」がお手軽に身につくわけがないことは分かっていたので、しょうがないとは思います。
この本では、「歴史・文学・芸術・科学・音楽・哲学・宗教」の7ジャンルから、知っておくにこしたことはない話題が、1ページにまとまめて簡略に紹介されています。ざっと読んでみた感じ、すこし「西欧」に偏り過ぎな印象のある内容でした。子どもの頃から本好きで、多ジャンルに興味のある私にとっては、機知のものばかりでしたが、さらっと復習できたので、読む価値はあったと思います。
例として「科学」ジャンルの記事の一部を紹介します(ごく一部の抜粋です)。
「4 クローン技術」
「(前略)ドリー誕生が衝撃的だった理由のひとつは、個体の特定の部位から取った細胞を使っても、まったく新たな個体を作ることができると、科学の世界で証明されたからだった。(中略)しかし多くの点で、ドリーは母親と違っていた。例えばドリーは、テロメアが極端に短かった。テロメアとは、遺伝子運ぶ物質である染色体の末端にある、細いひも状のタンパク質だ。テロメアの働きは、まだ正確には分かっていないが、細胞を保護・修復するのに役立っているらしい。年を重ねるにつれ、テロメアの長さは短くなっていく。ドリーは、母親から六歳時のテロメアを受け継いでいたので、ドリーのテロメアは、生まれつき同じ年齢の平均的なヒツジよりも短かった。(後略)」
「46 侵害受容:痛みを知覚すること」
「(前略)「病は気から」ではないが、痛みは間違いなく私たちの頭の中で起きている。脳のさまざまな部分がネットワークを組んで働き、ペイン・マトリックスとも呼ばれる痛み関連脳領域を形成する。このマトリックスの、ある部分が私たちに痛みの強度を伝え、別の部分が痛みの場所や持続時間、痛みの種類――ヒリヒリ痛むのかずきずき痛むのか激痛なのか――などを知らせる。こうして痛みを知覚すると、それが引き金となり、脳内の前帯状皮質という部分の働きで、さまざまな苦しみを感じる。おもしろいのは、このとき身体的な痛みと感情的な痛みが区別されないことだ。腕が傷ついたときも心が傷ついたときも、反応は一緒なのである。」
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1記事が1ページなので、とても読みやすく、私自身は自分の知識の再整理が出来たのですが、これらの記事の内容を初めて知る若い人にとっては、こんな短い記事だけで「教養として理解できる」のかどうか分からないな、という印象も持ちました。
また教養のジャンルが、「歴史・文学・芸術・科学・音楽・哲学・宗教」というのも、教養って、こんなジャンルと比率だっけ? という疑問を感じざるを得ませんでした。「芸術」と「音楽」が7つのうちの2つを占めています。それは良いのですが、美術の場合は紹介されている絵の写真がないものがあるし(あってもすごく小さい)、音楽はもちろん「曲を聴くことが出来ない」のです。その点がすごく残念でした。
その一方で、「宗教」が取り上げられているのは、宗教にあまり興味がなく、このジャンルの教養に欠けている私にとっては、知識を補完できて良かったと思います。
「文学」は英米文学に偏っているので、知らない作品が多かったのですが……これはまあ、そういう作品があるのか程度で流し読みしてしまいました(読んでみようかな、という気になった本も数冊あったので、今後、読んでみるつもりです)。
全体としては、読んで無駄にはならない教養書だったと思います。これから教養を身につけたい若者はもちろん、自分の教養の棚卸をしたい中高年以上の方にも役に立つと思います。この本だけで教養が身に付くとは思えませんでしたが(汗)、気になる記事を見つけたら、それに関連する情報(本)を自ら調べていく……という方法で、「教養」を深めていけると思います。教養への「きっかけづくり」に役立つ本です。読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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