『直しながら住む家』2020/4/10
小川 奈緒 (著)

 郊外の築古物件を、二度に渡ってリノベーションした実例を、写真で詳しく紹介してくれる本です。
 最初に行ったのは、1階のリノベーション。はじめての家づくり体験だったそうで、ベテランの建築家と工務店に主導してもらってリノベーションしたそうです(購入時の築年数:34年、設計期間:約2か月、工事期間:約4か月、リノベーション費:約1600万円、基礎補強工事費:約200万円)。とても素敵な「和モダン」って感じの家になっています。
 そして10年目に2階のリノベーション。この時は、住みながらDIYでリノベーション。ただし自分たちだけでやったわけではなく、施主自ら参加できるハーフセルフリノベーション(参加型リノベーション)をしている設計事務所にパートナーになってもらったそうです。(設計期間:約2か月、工事期間:DIYで参加しながら3か月、リノベーション費:約210万円)
 この方法、すごく賢いなと感心してしまいました。最初の1階のリノベーションは、水回りや構造のリノベーションも必要だったでしょうから、やっぱりプロにお任せするのが安心でしょうし、2回目の2階のリノベーションは、1回目の経験も活かして自分でやってみる……1階はプロが全部やってくれているので、構造部分もそれなりにきちんとしているのでしょうし、2階の方は内装中心のリノベーションになるだろうと予想できるので、素人でもなんとかやれそうな気がします。
 とても素晴らしいと思ったのが、「施主自ら参加できるハーフセルフリノベーション(参加型リノベーション)」をしている会社を探して、その方たちに相談したということ。そういう仕事をしている設計事務所などがあるんですね! 個人的には、この2回目のリノベーションの紹介が、とても参考になりました。設計事務所の方(つみきさん)は、すごく親身になってくれたようで、施主が「どんなリノベーションをしたいか」のアイデアをまとめるところから、次のようにアドバイスしてくれたそうです。
「家づくりは、決めなくてはいけないことがとにかく多い。木材や仕上げ材、トイレや洗面台の製品選び、建具のパーツ、コンセントのカバーまで……どれも好みの空間にするために必要な、胸躍る作業のはずが、情報も選択肢も無限に感じて途方に暮れてしまう。すると桃子さんが「『Pinterest(ピンタレスト)』を活用するといいですよ」とアドバイスをくれた。
 Pinterestは、検索ワードを打ち込むと、それに近いイメージ画像をウェブ上から集めてくれる写真共有サイト。たとえば「寝室をモダンな古民家旅館っぽくしたい」と浮かんだら、Pinterestの検索欄に「古民家旅館」と打ち込んでみる。するとパソコンの画面いっぱいに雰囲気のいい古民家や和室、旅館の画像がズラリ。その中から「いいな」と感じた一枚を選んでクリックすると、次の画面では、さっき選んだ一枚に似ている画像や関連する画像が集められて表示され、それを何度か繰り返すうちに、自分が本能的に求めているものがしぼられてくる。PC作業なので、役立ちそうなアイデアや商品情報をどんどん保存しながら、仕事の合間に効率よくプランを練ることができた。」
『Pinterest(ピンタレスト)』……とても便利そうですね!

 そして、2階のリノベーションは、次のように進めることになったそうです。
「リノベーションの設計プランは、約2か月間かけてつみきさんとメールやミーティングを重ねながら固めていった。工事は3月上旬から、約3か月間の予定でスタート。ちょうど気候が安定している時季で、庭を使った作業もしやすかった。
 つみきさんが立ててくれた全体の工事スケジュールは、初日からいきなり施主のDIYをスタートさせるのではなく、最初の2週間で大工さんにリノベーションの下地づくりをしてもらい、3週目からつみきさんと施主が工事を引き継いでDIYで完成させるというもの。部分的に難易度の高い作業や、素人には危険が伴う作業はつみきさんが受け持ってくれる。」
 難易度の高い作業は、プロが受け持ってくれる……すごく心強いです。しかも施主が参加して行う作業でも、いろんなサポートをしてくれたのだとか。
「カットしたフローリング材は、「サネ」という凸凹部分を組み合わせながら1枚ずつ張っていく。だから板をカットする際は当然サネを切り落としてはいけないし、湿気や乾燥で板が伸縮することを加味して、適度にスペースを空けて張り合わせる必要があった。他にも、きれいに仕上げるためのポイントがいくつもあって、それをうっかり忘れて次の工程に進みそうになっては、つみきさんに教えてもらう、のくり返しだった。」
 ……フローリング材を張るのにも、湿気や乾燥による伸縮を考慮しなければならないんですか……工作好き人間としては、こういうの、積極的に作業したいと思っていましたが……やっぱりプロにアドバイスしてもらうのは大切ですね。床がたわんだり、隙間ができたりしたら危ないですから……。
 家のリノベーション事例として、すごく参考になることをいろいろ教えてもらえた本でした。工作好きとしては、「中古住宅のリノベーション」、やってみたいと思いますが、実際に行う時には、やっぱりプロに主導してもらって、自分は「後で修理を自分一人で出来るぐらいになる」意気込みで、「手伝い」をさせていただきたいと思います。
 この本には、他の家のリノベーション例も数件掲載されています。写真(フルカラー)も豊富で、とても参考になると思いますので、家のリノベーションや購入を考えている方は、ぜひ一度、眺めてみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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