『3D地形図で歩く日本の活断層』2016/7/25
柴山 元彦 (著)

「活断層」を正しく楽しく知るための入門書。全国のユニークな34の活断層が、3D地形図や写真やイラストをつかって紹介されています。紹介されている活断層は次の通りです。
01 泉郷断層(北海道)
02 青森湾西断層(青森県)
03 寒河江‐山辺断層(山形県)
04 観音寺断層(山形県)
05 棚倉西・東断層(茨城県)
06 丹那断層(静岡県/北伊豆断層帯)
07 静岡‐小淵沢断層(静岡県)
08 糸魚川‐静岡断層(新潟県)
09 赤石断層(長野県)
10 跡津川断層(岐阜県)
11 阿寺断層(岐阜県)
12 根尾谷断層(岐阜県)
13 養老断層(岐阜県)
14 柳ヶ瀬断層(滋賀県)
15 比良断層(滋賀県)
16 花折断層(滋賀県~京都府)
17 五月丘断層(大阪府)
18 生駒断層(大阪府)
19 上町断層(大阪府)
20 諏訪山断層(兵庫県)
21 安富・土万・大原断層(兵庫県)
22 伊賀断層(三重県)
23 多気断層(三重県)
24 根来断層(和歌山県)
25 池田断層(徳島県)
26 石鎚断層(愛媛県)
27 長者ヶ原断層(広島県)
28 筒賀断層(広島県)
29 大竹断層(広島県)
30 菊川断層(山口県)
31 西山断層(福岡県)
32 日奈久断層(熊本県)
33 人吉断層(熊本県)
34 鹿児島湾東縁・西縁断層帯(鹿児島県)

 3D地形図とともに風景写真も見ることが出来るのですが、これが意外に普通の風景ばかり(汗)。山裾に広がる住宅地とか、里山の風景とか、国道とか……これが断層の写真なら、日本全国、断層だらけなのでは? と思ってしまうほどです。
 ん? そもそも断層って、なんだっけ?
 この本の冒頭の記事(「断層と割れ目の違い」)に、ちゃんと説明がありました。断層とは、次のものを言うそうです。
「地面や岩にできた規則的な割れ目を節理という。この割れ目の面(断層面)を境にして両側の岩石や地層にずれが生じていると、断層と呼ばれる。割れていても、節理の両側は同じ地層だが、断層の場合は、ずれのため地層が食い違って、断層面の両側に異なる時期にできた地層や岩石が隣り合うことになる。」
 へー、そうなんだ。そして「活断層」というのは、「第四紀(260万年前~現在)に繰り返し活動があったか、将来も活動する可能性がある断層」のことだそうです。
 全体を読んでみたら、断層付近の風景写真(山裾に広がる住宅地とか、里山風の風景とか、国道とか)は、断層が生んだ風景とその活用状況として、ごく普通の実態だということが分かりました。例えば「鯖街道」などの昔の街道は、「断層の影響でできた谷」に作られることが多かったのだとか。だから「昔の街道→人が多く住む場所(住宅地や里山)、国道」ということになるようです。この本には次のような説明がありました。
「断層の影響でできた谷は直線状になることが多く、花折断層の谷にも、日本海で捕れた魚をできるだけ新鮮な状態で都にとどけるため、街道が造られた(鯖街道)。」
 そうなんだ……活断層というと、地震が多発しそうで怖いイメージがありましたが、日本人は昔から断層をいろんな形で活用して生きてきたんですね。
 また、この本を読むことで、昔から抱いていた疑問の一つ「同じような変な形に折れ曲がっている川が、平行に複数あることがあるのは何故?」が解消されました。それは、「横ずれ」が起こった証拠の一つだそうです。「跡津川断層」には、次の説明がありました。
「このように2つの川が180度で合流したり、直角に流れを変える現象が起きるのは、断層が直線状にここを通っていることによる。(断層の横ずれによって川の流路もずれることに起因している)」
 ああ、なるほど!
 その他にも、「世界に延びるフォッサマグナ」(本州の中央を縦断するフォッサマグナ西縁断層の延長は、日本海を北上し、ロシア・シベリアを通り、北極海を超え、大西洋に入ってアイスランドを通過する。さらに南へいくと、大西洋の中央海嶺の海底山脈を形成して連続している。)など、興味深い記事をたくさん読むことが出来ました。地学に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
   *    *    *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
<Amazon商品リンク>