『火山のしくみ パーフェクトガイド: 成り立ちから噴火、災害、恩恵まで、火山のすべてを大解剖! 』2019/1/9
高橋 正樹 (著)

 火山ができるしくみ(大陸・海洋プレート)や火山の種類、噴火のメカニズムといった基礎知識の解説の他、防災対策、噴火予知などに関する最新情報も紹介してくれる『火山のしくみ パーフェクトガイド』で、内容は以下の通りです。
序 章
第1章 火山はどうしてそこにあるのだろう
第2章 マグマはどのようにしてできるのか
第3章 火山はどうして噴火するのか
第4章 噴き出したマグマ
第5章 火山のかたちはどのようにしてできたのか
第6章 火山の地下はどうなっているのか
第7章 噴火はどのように予知するのだろう
第8章 火山は恵みをもたらす
第9章 特別編集 火山の素顔をのぞいてみよう

 日本列島のそばには、千島海溝、日本海溝、そして伊豆・小笠原海溝があり、さらに南海トラフ、南西諸島海溝がありますが、これらの海溝と平行に火山フロント(火山の出現の限界を示す線)が分布しています。日本列島はプレートの沈み込み境界にありますが、海溝・火山フロントは、プレートの沈み込みと密接な関係があるのです。
 地殻の変動帯にある日本列島は、地震が起こりやすい地帯であるとともに、火山も多数あります。そして歴史的にみても富士山の噴火、浅間山噴火、阿蘇山の噴火など、火山による大災害もまた多数起こっているのです。防災的に考えると、地震も気になるけど、火山の噴火も気になる……ということで、早速、この本を読んでみることに。
『火山のしくみ パーフェクトガイド』というだけあって、内容は、火山の成り立ちから噴火、災害、さらには恩恵まで、幅広く網羅的な解説がありました。フルカラーのイラストと写真も豊富で、とても分かりやすく、見ごたえがあります。
 例えば「第3章 火山はどうして噴火するのか」の中の「噴火は発泡だ」という記事。
「噴火は、マグマ中に含まれていた主に水からなる火山ガス成分が発泡することで起こる。」のだそうです。なるほど……それで噴出物の軽石は、みんなスポンジみたいに穴が開いていて軽いんですね。ちなみに気泡が保持され、はじけていない状態でマグマが冷え固まった岩片のうち、色が白っぽいのを軽石、黒っぽいものをスコリアと呼ぶのだとか。
 また噴火の予知も進んでいるようで、火山活動の予測をするために、水準測量、地震波の変化、磁場や電気抵抗、重力の変化、火山ガスの増大、地面の隆起など、さまざまな計測が行われているそうです。
 人工衛星を利用すると、地下の断層の動きや地面のふくらみ状況だけでなく、なんと地下から上昇してくるマグマの様子まで観測できるのだとか。
 さらに宇宙に由来するミュオンを活用した透視(ミュオグラフィ)まで行われているのだそうです。
「ミュオグラフィを使えば、火山浅部の内部構造を透視できる。宇宙に由来する素粒子ミュオンはきわめて高いエネルギーを持っている。そのため、ミュオンの透過力は岩盤にして1kmを超える。ミュオグラフィはミュオンの強い貫通力を利用した、いわば巨大物体のレントゲン写真撮影術だ。」
 ……最近は、そんな技術が使われているんですか! 最新技術を活用して、火山噴火の予知が進むといいなと思います。
「第8章 火山は恵みをもたらす」では、火山の恩恵として、「火山学者が選ぶ火山性温泉ベスト10」(霧島・新湯、那須湯本、万座、高峰、草津、箱根大涌谷、玉川温泉、登別、雲仙、鰻)も紹介されていました。
 そして「第9章 特別編集 火山の素顔をのぞいてみよう」では、富士火山、浅間火山、草津白根山、西之島火山、鬼界カルデラの6つの地帯の赤色立体地形図を、じっくり眺めることができました。赤色立体地形図は、航空機によるレーザー光線を利用することで、樹木などの草木を通り抜けた「地方面の微妙な凹凸を表現した立体地形図」なので、富士山や浅間火山などの本当の姿はこうなっていたんだーと、すごく興味津々。
 特に興味深かったのは、「鬼界カルデラ」。古代日本に壊滅的被害をもたらした鬼界カルデラは海底にあるのですが、こんなに詳細な赤色立体地形図が作られているのですね。しかも現在でも、「巨大カルデラ噴火後も活発なマグマの供給が続いている」そうで、「少なくとも鬼界カルデラは、後カルデラ期は「静穏期」であるという考えは適応できず、次の巨大噴火の準備期に入ったと考えるべきであろう。」なのだとか(……怖っ)。
 ……鬼界カルデラや富士山などがすぐに大噴火を起こすことはないのかもしれませんが、歴史的にみても、日本のどこかで火山災害が再び起こる可能性は高いので、火山災害予知の精度が向上していくことを期待したいと思います。
 火山のことを総合的に知ることが出来る『火山のしくみ パーフェクトガイド』でした。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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