『60分でわかる! 建築家とつくる「いい家」づくりの教科書』2019/3/15
堤 猛 (著)

 家を建てる人の抱える問題を数多く見てきた建築家の堤さんが、「家」を建てる前に知っておいて欲しいことを教えてくれる本です。
 正直に言って、家のデザインには、なんのこだわりもなく、大多数の人が快適だと思って暮らせるような普通の家(機能的に優れた標準的仕様の家)が、一番いいと思っています。まだ家を建てようとも思っていませんが、もし家を手に入れるとしたら、ごく一般的な感じで、建売住宅かハウスメーカーの家を選んでおけば簡単だし安心だろう……なんて考えていました。
 ところが、この本を読んでみたら、その考えが一変! なぜなら「建売住宅」は、価格はすごく安いけど品質が低いことが多いとか、「ハウスメーカー」は、無駄なコストが多い上に品質にばらつきがあるとか、驚きのことがたくさん書いてあったからです。
 建築家の方が書いている本なので、「建築家と家を建てよう」という方面寄りの本だということを考慮してみても、書いてあることに説得力がすごくあったので……家を手にいれる時には、「建売住宅」か「ハウスメーカー」でいいや、とは思えなくなってしまいました。

「手抜きや欠陥」のない会社を見極めるには、次の2つの質問をすると良いそうです。
1)「知り合いの建築士に監理を依頼してもいいですか?」
2)(1)を断られた場合)「監理者はどのタイミングで何回くらい現場に来ますか?」
 なお「監理」とは、現場監督が行う「管理」とは違うもので、「図面通りに工事されているかチェックする。不都合がある場合は業者にやり直し求める。」ことだそうです。これを行わないのは違法建築になるそうですが、監理と工事を同じ業者が行ってしまうなどして事実上きちんと機能していない場合が多いようです。しかも法律上、「監理者を定める義務は工事業者ではなく、お客様の義務」なのだとか! 自分で家を建てる時には、絶対に「監理」をきちんとやらねば!と、決意しました。
 堤さんのお勧めは「設計と監理を設計事務所に、工事を工務店に依頼する方法」で、それが「工事の品質を最大限に高める家の建て方」だそうです。なお、建築士をやとって監理してもらう場合、費用は工事金額の5%前後になるのだとか。
 また「「いい家」づくりの要注意ポイント」として、「薄い設計図面や薄い見積書はダメ」という話も、とても参考になりました。設計図も見積書も、それぞれ「一般的な木造2階建住宅で数十枚になる」はずだそうで、これらの内容が大雑把だと、工事内容が曖昧になって、問題が発生しても工事のやり直しを求められないとか、多額の追加料金が発生するなどのトラブルが起こる可能性が高いそうです。
 これから住宅の新築を考えている方にとって、すごく参考になる情報が、これ以外にもたくさん掲載されています。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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