『46億年の地球史: 生命の進化、そして未来の地球』2019/1/23
田近 英一 (著)

 地球が誕生した約46億年前から現在にいたるまでの、地球と生命の進化に関する最新の知見をまとめた本です。
 ジャイアント・インパクト、地球の誕生、海洋の形成から生命の誕生、スノーボール・アース(全球凍結)、大酸化イベント、カンブリア大爆発、超大陸パンゲア、恐竜の登場から絶滅、地磁場逆転とチバニアン、人類の誕生、そして今まさに進行中の地球の変化、太陽系の未来までが、小さな文庫本にぎっしり詰まっています。
 フルカラーで、写真やイラストも綺麗で分かりやすいですが、なんと言っても、記事の内容が凄い。これまで分かっている地球の歴史の総まとめ(最新の調査・研究による知見も含まれています)を、簡潔に分かりやすく読むことが出来るのです。おかげで、これまでの総復習とともに、今まで知らなかった新しい情報や、最近の研究で修正された情報など、いろいろなことを知ることが出来ました。例えば、次のようなことです。
「最近の隕石の研究から、超新星爆発によってしか形成されない鉄の同位体が発見されています。しかも、超新星爆発に由来する鉄の供給は、太陽系形成の開始直後だった可能性があるようです。このことは、太陽系が誕生した際、近傍には大質量星が存在していて、それが超新星爆発を起こしたこと、さらには、太陽近傍ではたくさんの恒星が同時に形成されていたことを示唆している可能性があります。」
「地球は火星サイズ(地球質量の約10分の1)の原始惑星が10回程度、巨大衝突して形成されたものと考えられています。とりわけ、最後の巨大衝突は、破局的なものでした。(中略)巨大衝突によって、原始地球は数千~数万度に加熱され、大規模な蒸発と溶融が生じたと考えられます。」
「(ニースモデルによれば、)太陽系形成初期には巨大ガス惑星の軌道配置が現在とは異なっており、微惑星との重力的な作用によって土星が外側に移動していきます。その過程で、木星との重力的な相互作用が特別に強くなる条件(軌道共鳴という)に至ったとき、水微惑星や小惑星が重力的に散乱され、その一部が地球や月に飛来してきて後期重爆撃が生じた、ということになります。」
 なかでも次の記述は、これまでの知識を更新してくれました。
「大陸表面に陸上植物が初めて進出したのは、今から約4億年前のことで、それ以前は陸上に生物はいなかった、と従来は考えられてきました。」
 なんと、この「オゾン層による紫外線遮蔽説」は、すでに1980年代に否定されているのだそうです。
「生物にとって有害な紫外線を遮蔽するオゾン層は、大気中の酸素濃度が現在の1000分の1レベルでも形成されることが分かったのです。現在の1000分の1レベルというのは、大酸化イベントが生じた約20億年前にはすでに達成されていたと考えられるレベルです。したがって、オゾン層の形成と植物の陸上進出には直接の因果関係はないことになります。生物の陸上進出は、もっと別の環境要因か生物進化要因によるものだと思われます。」
 さて、現在は人間の二酸化炭素排出による地球温暖化が懸念されていますが、今から約5600年前にも突発的な温暖化イベントが発生していて、その様子が、海水の酸素および炭素の同位体比の変化として海底堆積物中に記録されているのだとか。それによると、温暖化は約1~2万年というごく短期間で進行し、全球平均気温が10度近く、海洋の深層水温が5度程度も上昇したそうです。これは海底堆積物中のメタンハイドレートの分解によるものではないかと推定されているようですが、この時の状況を詳しく調べることで、今後の地球温暖化問題にどう対処できるか考えることが出来るのかもしれません。
 壮大な地球の物語を概観できる本でした。読んでいくうちに、地球に対する人間の小ささを感じるとともに、生物には地球環境を変えるほどの意外に大きな力(酸素を大発生させたシアノバクテリア、二酸化酸素を増加させている人間)があるのだなーという、矛盾した気持ちを抱かされました。
 そして地球は、今後も変わり続けていくそうです。
「プレート運動がもし現在のまま続けば、アフリカ大陸やオーストラリア大陸が北上してユーラシア大陸と衝突します。」
「太陽光度は1億年で約1パーセントの割合で増しており、この先もさらに明るくなっていきます。(中略)太陽光度の時間的増大によって、二酸化炭素濃度が光合成限界に達するのは今から約9億年後、地表面気温が100度に達するのは今から約15億年後と見積もられています。」
 遠い未来は、「地球消滅」が確実なようですが、人間を含む地球生命体の未来は、宇宙への進出によって地球が消滅した後も続くのかもしれません。
 46億年の激動の地球史がぎゅっと詰まっていて、新しい知見にわくわくさせられる素晴らしい本でした。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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