『フロスト日和』1997/10/18
R・D・ウィングフィールド (著), 芹澤 恵 (翻訳)
肌寒い秋の季節。デントンの町では、連続婦女暴行魔が跳梁し、公衆便所には浮浪者の死体が転がります。そして次々に発生する難事件。役たたずのぼんくらとそしられながら、名物警部フロストの不眠不休の奮戦と、推理の乱れ撃ちは続きます。傑作ユーモア・ミステリー、フロスト警部シリーズ第二弾です☆
(※ここから先は、物語の核心にふれるネタバレを含みますので、結末を知りたくない方は読み飛ばしてください)
第一作『クリスマスのフロスト』ですっかりウィングフィールドさんのファンになり、いそいそと手にしたこの本ですが、なんとクライブ君が出ていない!(涙) クライブ君のその後も見たかったのに……クライブ君のことは、まったく一言もなしだったのでした。
さて(気を取り直して)、今回、フロスト警部が一緒に行動するのは、ウェブスター巡査。実は少し前までフロスト警部と同じ「警部」だったのですが、上司に鉄拳をお見舞いしたために降格されて、この田舎警察のフロスト警部の下で働くことになってしまったのです(涙)。元警部だったのでプライドも高く、一見するとスケベなぼんくら親父にしか見えないフロスト警部に不信感を抱いています。波乱が起こらないはずがないコンビですね(笑)。
そして今回も、この新人君、ワーカホリックのフロスト警部に振り回されっぱなしです(笑)。でも……頼むから不眠不休で働くってのは、やめてくれ~! 読んでいる方も辛いんです……。そしてフロスト警部、統計資料の方はともかく、みんなの残業代の書類はちゃんと期限を守って提出しろ! 前回で懲りなかったのか、この馬鹿親父め。
……二冊目ともなると、すっかりフロスト警部の同僚気分になって、いろんな突込みを入れつつ読んでしまうのは、この小説の登場人物たちが、みんな活き活きと血の通った人間ばかりだから。あまりにも自然なので、つい忘れがちになってしまいますが、本当に凄い描写力のある作家だと感心させられます。
そしてフロスト警部がこんなにも周囲のみんなに愛されるのは、彼自身の「共感力」が凄いからなのでしょう。被害者のみならず、加害者の気持ちにすらなることが出来て、ちょっとした違和感を逃しません。本当はもの凄い天才なんだよなー……。
今回も大きな謎と小さな謎を散りばめ、息つく暇もないほどの不眠不休の奮戦っぷりです。……ん? 前回とほぼ同じじゃねーか、という気もしないでもないですが(笑)、700ページ越えの長編を一気に読ませてしまう凄い力量で、またまた、すっかり堪能させていただきました。早くも次回作が待ち遠しいです☆
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