『ためない練習: 大事なものだけ残していく、人生のヒント』2016/1/22
名取 芳彦 (著)

 お金も、物も、人も、「持ちすぎない」ほうが絶対にいい……物質だけでなく、精神的な意味でも「ためない練習」をすることを教えてくれる本です。
 日本はものすごく豊かな社会になったようで、「断捨離」とか「ミニマリスト」とかが流行っているので、この本も「モノをためない」習慣の作り方を教えてくれる本なのかと思ってしまったのですが、「モノ」どころか「心配」や「欲望」、さらにはなんと「友達」まで、あらゆる意味で「ためない」暮らしをするためのヒントを教えてくれる本だったのでした。
 もちろん「モノ」を「ためない練習(心構え)」も教えてくれます。例えば、「まずは「十個」減らすことから始めよう」とか、「捨てるのが惜しいときは「新陳代謝」と考える」とか、「いつか使うかも、の「いつか」は来ません」とか、「捨てられないものは、「仏さまにお任せ」してみては?」などなど、参考になることがいっぱいありました。
 耳に痛かったのは次の記述。
「床に物を置かないほうがいいのです。床に置いた物は、他のガラクタを磁石のようにひき寄せ、積みあげる強力なパワーを秘めています。」
 ホントにそうですね……(トホホ)。
 でもこの本の真のテーマは、モノだけでなく、あらゆる「煩悩」のようなものを「ためない」ことなのでしょう。心にとまる言葉を、たくさん見つけることが出来ました。
「人のいいところを見つけると、その人を見る自分の眼が優しくなる」
「つい批判してしまったら、必ず解決策をつけ加えて」
「「怒る」んじゃなくて「叱る」んです」
「心を磨いておけば、うっかり何を言っても大丈夫」
「(緊張するシーンでの)心臓のドキドキは「あなたを応援している(拍手の)音」です」
「あまり自分を責めなくてもいいですよ。必要なとき、他人が責めてくれます」
「過去を思わず、未来を憂えず、「今」を生きる。(中略)大切なのは、「過去に戻ることはできないし、未来を生きることもできない」としっかり納得して、今を生きることなのです」
「仏教的に言えば、「自分らしさ」などありません。(中略)「自分らしく生きたい」と思うなら、自分の中にある特質すべてを認めて生きていく以外に方法はないのです」
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 子どもの頃から慎重な性格で、いろんなことに悩みまくり、未来を不安がって過去を悔いて生きてきましたが、最近はすっかり老成してきたのか(老化が進んできた?)、「なんとかなるさ」で気楽に生きられるようになっています。だから、この本の次のアドバイスに共感しました。
「そのとき、その状況の中で臨機応変に対処するのが楽に生きるコツ」
「やるだけやったら、それで仕方がないのだから、それから先は悩む必要はない」
 このなかで特に、「やるだけやったら、悩む必要はない」というアドバイスは、実は「自分が納得するまでやる」必要があるので作業自体は大変ですが、その結果がどうなったとしても、「自分としては、それ以上はできなかったのだ」と突き放すことが出来るので、精神的にはすごく楽になる方法で、お勧めです。
 大事なものだけ残して、不要なもの(煩悩)を「ためない」ことを教えてくれる本でした。エッセイ集みたいな感じなので、気になる部分だけを拾い読みすることも出来ます。物質的に周囲に物が溢れて困っている方、精神的に何かに悩んでいる方は、ぜひ読んでみてください。何かヒントを得られると思います。
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