『ハッカーの学校』2015/1/23
IPUSIRON (著)

ハッカーとはどのような知識を持ち、どのような手順でサーバーに侵入して情報を盗むのか? サーバー侵入達成までの具体的な流れやハッキングの技術を、順を追って解説してくれる本です。
この『ハッカーの学校』を見て、ああ、前に読んだ本だと思った方も多いかもしれません。実を言うと私自身も、ずーっと前に読んだ本だと勘ちがいしてスルーするところでした(汗)。これはロングセラーの『ハッカーの教科書』10年ぶりの最新作(2015年当時)です。以前、『ハッカーの教科書 完全版(2005)』を読んだ時には、うーん……これは上級者向けで一般向けではないな、という判断で、このサイトでは紹介しなかったのですが、今回の本はとても分かりやすくて、ああ、あの当時よりもこちらの知識が増えたからか……なんて思ってしまいましたが、まったくの勘違い(笑)。この本は、以前の本よりも「基礎知識編」を充実させてくれたものだそうです。内容(目次)は、以下の通りです。
1章 ネットワークのハッキング・解説編
(ネットワークIPアドレス、サブネットマスク、MACアドレス、プロトコル 他)
2章 ネットワークのハッキング・実践編
(サーバー侵入のプロセス、Kali Linux、光海底ケーブルに対する攻撃によるネットの破損、陸上ケーブルに対する攻撃によるネットの破壊、Ping 他)

この本は、内容を、ハッキングの基礎として位置付けられている「サーバー侵入」に絞って、実践的に解説してくれています。
1章の解説編では、サーバー侵入を理解するために必要なネットワークの基礎についてを、2章の実践編では、攻撃対象の探し方からサーバー侵入に至るまでの一連の過程を解説しています。
前の本より「ネットワークの基礎知識の解説編」が充実してはいますが、ネットワークの学習初心者向けではありません。ネットワークをある程度は理解している中級者が、上級者にステップアップするための解説書だと思います。
個人的には、1章の解説編が特に参考になりました。ネットワーク関連の書籍は、中級編以降になると、内容が詳細になるせいか個別の技術に特化したものが多くて、全体的に総復習したいときに使える本はあまりないような気がしていました。が、この本は、ネットワーク全体に関する基礎知識を、コンパクトかつ具体的にまとめて紹介してくれているのです。例えばプライベートIPアドレスの場合は、「プライベートIPアドレスというのは、LAN内で割り振るためのIPアドレスのこと」という簡単な解説だけでなく、プライベートIPアドレスで使用されるアドレスが、次のように具体的に紹介されています。
・10.xxx.xxx.xxx(10.0.0.0~10.255.255.255)
・172. xxx.xxx.xxx(172.16.0.0~172.31.255.255)
・192.168. xxx.xxx(192.168.0.0~192.168.255.255)
専門家でない限り、こういう具体的な数値はとても覚えきれないので、こういう風に、ネットワーク全般についてコンパクトかつ具体的に紹介されている本が一冊あると、とても便利だと思います。この本が本棚に一冊あると、あれって何だっけ?と思った時に、すぐに参照できます。
ただ……それだけに、巻末に索引や用語集がないのが、とても残念でした。それがあると、参考書として更に使い勝手が良かったのに……でも、それを追加すると、いっそうぶ厚くなり高価になって、そういう意味で使い勝手が悪くなるかもしれませんが(汗)。
さて、そして「2章 ネットワークのハッキング・実践編」では、一般的なツールの使い道の簡単な解説や、ダウンロードの方法などが具体的に紹介されています。こちらもネットのハッキングなどの悪用だけでなく、ネットワークの管理やハッキングの証拠探しなどの防御側としても利用することが多いツールに関する解説なので、ネットワークのツールの総合的参考書として大いに活用できると思います。
ネットワークに関心のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
さて今回紹介したのは、『ハッカーの学校(2015/1/23)』ですが、ITの本は技術の変化が激しいので、最新版がある時には最新版を読む方がだんぜん良いです。今後は、『サイバー攻撃の教科書(ハッカーの学校)(2019/4/5)』という本が出る予定があるようです。この本と同じく、基礎知識部分が充実しているといいのですが……(目次をみる限り、「基礎知識部分」の比率は下がっているような感じです)。(なお、この記事は2019.03に書いたものです)
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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