『誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性』2018/2/15
田中潤 (著), 松本健太郎 (著)
これからの日本は、「人工知能」とどう向き合うべきかを考察している本です。
これまで何度か来ていた人工知能ブームが、ここに来て急に本格化しているのは、人工知能自身が自分で学習してくれる「ディープラーニング」が進んできているからですが、これを使った人工知能の強みは、1)リソースさえあれば無限にありとあらゆるシミュレーションが出来る、2)記憶が完璧、という点だそうです。
また、ディープラーニングの特徴は、1)学習のさせ方が楽、2)特徴量の多い高次元なデータでも学習可能になった、3)過学習をおこさなくなった、4)自由が利く、というところにあり、デメリットとしては、数字や言葉などデータとして表現できないものを人間のように読み取る力が全くない点にあるのだとか。
この本は、ディープラーニングを使った人工知能に焦点をあてて、その特徴を分かりやすく説明してくれます。が、技術的な説明はあまりなかったので、「専門家による人工知能の分かりやすい技術解説」をしてくれる本というよりは、一般の方向けに「今後の人工知能」の行方を示してくれる本のように感じました。
さて、流行の人工知能を一刻も早くビジネスに取り入れなければ、と考えている企業も多いと思いますが、人工知能をビジネスに導入するには、次のようなリスクが考えられるそうです。1)ディープラーニングを理解した人材の不足、2)人工知能を導入しようとする組織の勉強不足、3)質の高い学習データの不足……確かに、そうですね。特に「学習データ」については、「なるべくディープラーニングで活用しやすいよう、デジタルな環境に自然と蓄積できるようにする」必要があるようです。
そして個人的に参考になったのが、「第3章 社会に浸透する人工知能に私たちはどのように対応するべきか?」の中で提言されていたこと。
人工知能技術・ビジネスを推進するための人材を育成するためには、「日本の大学に統計学部の設置」すること、子どもたちは理数系大学に進学できるレベルの数学を学ぶことを促進すべきだと言っています。
また人工知能時代へ向けた取り組みをしたいと考えているビジネスマンの方には、「今すぐプログラミングを始めよう」とも語りかけています。お勧めは機械学習の定番のPythonだそうです。
ところで、人工知能が進む未来の社会は、「古代ローマ時代」のようになるかもしれないそうです。
「古代ローマ時代、仕事は「奴隷」がするもので、「自由人」が普段何をしていたかと言えば「議論」だそうです。(中略)人工知能が仕事を奪うのではなくて、人工知能によって労働から解放されるという発想です。人工知能という「奴隷」に全部やってもらえばいいのです。」
なるほど……そんな都合のいい(?)未来が本当に来るのかどうかは分かりませんが、人間と人工知能がともに働く未来がバラ色になるかどうかは、私たち自身にかかっているのだと思います。
この本では、ディープラーニングを活用した人工知能を主に取り扱っていましたが、個人的には、近い将来の人工知能には、再び「ルールベース」も取り入れられるのではないかと考えています。ただしその「ルール」は、人間の作った「法律」や「教科書」から、人工知能自身が作り出していく、という方法で。人工知能の「ディープラーニング」部分はブラックボックスでも、「ルールベース」部分がプログラミングのように明文化できるものになれば、一部のルールだけの変更も可能だし、判断理由も分かりやすくなり、より取り扱いやすいのではないでしょうか。なにより、その方が「安心して仕事を任せられる」気がします。
人工知能は、今後、我々の社会にどんどん利用が広がっていくと思います。今後も注目していきたいと考えています。
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