『発達障害に気づかない大人たち<職場編>』2011/4/2
星野仁彦 (著)

発達障害の方が職場で「時間や約束を守れない」「仕事に集中できない」「上司や同僚とのコミュニケーションがうまくとれない」といった問題を抱えているとき、本人や周囲の人々はどのように対処したらいいのかをアドバイスしてくれる本です。
発達障害というと、すぐに自閉症を思い浮かべてしまいましたが、発達障害は「脳機能の発達に偏りのある脳機能障害」のことで、いろいろなタイプがあるそうです。大きく分けると二つのタイプがあって、一つ目は、「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」。その特徴は、不注意(集中できない)、多動性(落ち着きがない)、衝動性(後先考えずに思いつきでパッと行動してしまう)だそうです。そして二つ目は、アスペルガー症候群(AS)に代表される「広汎性発達障害(PDD)」。その特徴は、社会性の問題(人と親しくなる気がない)、コミュニケーションの問題(言葉のキャッチボールができない)、想像力の欠如(一つのことに強くこだわる)なのだとか。
実は、発達障害の方の中には、知能が高い方もいるそうで、「障害の程度が軽い場合は、普通に授業についていけますし、なかにはクラスや学年でトップクラスの成績優秀な子供もいます。」とのことでした。このような成績優秀な方は、周囲だけでなく本人自身も「発達障害」と気づかないことがあるそうで、なんとこの本の著者の星野さん(心療内科医・医学博士)自身も、発達障害なのだとか! だからこの本は、ご自分の経験を踏まえた、すごく具体的なアドバイスをしてくれる上に、納得できることも多く、とても参考になりました。
例えば「第3章 職場で発達障害者を活かすには」では、「周囲の人ができる11の工夫」として次のようなことを教えてくれます(本には具体的な説明があります)。
・仕事の進め方に問題がある場合
1)「作業マニュアル」とスケジュール表を作る
2)作業を確実にやってもらうには「構造化」する
3)仕事の能率の悪さは目標管理で改善を促す
4)集中力に欠ける場合は仕事の適性を再検討する
5)複雑な作業は工程を細分化してやってもらう
6)機器や道具の使い方などは具体的な言葉に置き換える
・コミュニケーションに問題がある場合
7)曖昧な表現は避け、具体的に伝える
8)マナーや慣習は可能なかぎり明文化する
9)指導や注意はできるだけ穏やかに行う
・職場環境に問題がある場合
10)パニックになったら一人になれる静かな場所へ移す
11)周囲の刺激に過敏な場合はその刺激を減らすことを考える

また「第2章 発達障害者が仕事をうまくこなすには―職場で自分の特性を活かすコツ」には、発達障害者ご本人への22項目のアドバイス(「やるべきこと一覧」でスケジュールを管理する、など)がありました。こちらのアドバイスにも、例えば「11)会議では出し抜けに意見しない」ようにするためには、「思いついたことをまず手帳やノートにメモして、本当に発言すべき内容か考える時間を置く」など、具体的な方法が書いてあります。
発達障害者の方の最大の悩みは、仕事がうまくいかず、職場で孤立してしまうことだそうですが……支える周囲の方もかなりの努力が必要になるので、とても難しい問題ですね……。もしもこの問題で悩んでいる方がいたら、この本をぜひ読んでみてください。何か、解決へのヒントをつかめるかもしれません。
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