『考えない病 危機管理の視点からみた日本人の劣化の根源』2016/3/29
東 祥三 (著)

戦後、日本人の資質が劣化した原因は、GHQによる「洗脳」にある。「他力本願」、「現状維持」というメンタリティがはびこる日本は、このままでは国際社会では生き残れない……国会議員として、国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）職員としての経験のある東さんによる、日本の誇りを取り戻すための辛口の再生論です。
あまり「他力本願」ではない私ですが、やっぱり「現状維持」がいいと思ってはいますし（汗）、なんとなく「正義を貫いていれば、きっと神様が助けてくれるに違いない」という気持ちも持っていたので、この本の辛口の指摘が、心にぐさっと刺さりました。「正義を貫けば、きっと神様が……」について、東さんは「国際関係においてはこうした理想論は願望に過ぎず、成立することは決してない。」とばっさり切り捨てます。……確かに、現実的にはそうだよなーと、私も思います。
「自立するためには、身近に存在しているさまざまな危機の到来を想定し、その種類と規模を見極め、徹底分析し、現代国家として対処しなければならない。それが今の日本に求められている。そのためにはまず、現状維持と他力本願とは縁を切ることだ。」そうです（汗）。
そして戦後の日本人が、他力本願・現状維持のメンタリティを持つことになった原因は、GHQによる徹底した検閲による「洗脳」にあるのだとか……そうなのかもしれません。
しかも、「アメリカでは小さい頃から「自分でできることは自分でしなさい」と教えられるという。ところが日本では親が「あれをしなさい」「これをしなさい」と子どもに指示し、自分で判断させることをしない。」のだとか。
こうして「考えない」日本人が増えてきていることを、東さんは憂慮しています。そして次のように提言しています。
「それでは、これからどうするのか？　僕なりの極端な意見を言えば、最後は自分自身で考えるしかない。結局のところ、考えることは人としての基本であり、自問自答するしかない。自問自答し考えることで、一人ひとりの意識が変わり、意識が変わった人間がより良い日本を作っていくのだ。（中略）判断力をつけるためには、情報を集め、分析し、判断しなければならない。そのためには考えることが必要だ。つまり、自問自答し、自分の頭で判断することに尽きる。判断の背景としての考える行為は、前述したように対象と深く交わらない限りできない。そして、自分が当事者意識を持たないと対象としっかり交われないのだ。」
……確かに、そうですよね。少なくとも「目の前の危機をボーッと見ている」日本人には、ならないようにしようと心がけたいと思います。自分の身ぐらいは自分で守らなければ。
また「力なき正義は無力なり（パスカルの言葉）」もまた真実だと思います。たとえ自分一人が「正義を貫いていても、神様が助けてくれるわけではない」のが国際社会の常識なのですから。自分の身を自分で守れない人間が軽くあしらわれ危険な目にあいやすいのと同じように、自分の国を自分で守れない国が、他国と対等な外交ができるわけがないと思います。
地震国の日本は、災害面での危機管理は他国に比べてそれなりに出来ているように思いますが、国際関係での危機管理はあまり出来ていないようにも感じます。日本は戦後、大変な努力によって世界有数の国と認められるまでに復興してきました。それなのに、国際的な危機管理面では、いまだに「アメリカの庇護」を当てにしたり、根拠のない平和幻想を抱いていたりするような気がします。アメリカをはじめとする全世界が、「アメリカファースト」「自国第一」に傾きつつある現在、日本も変わるべき時が来ているのかもしれません。
平和外交を貫く姿勢を維持することは大事ですが、他国と対等な関係を持つために、最低限、自分の国を自分で守る力を持つことが大事ではないでしょうか。そういう意味で、憲法九条の「戦争放棄」の理念と、自衛隊は共存できると思いますし、いざ「危機」が発生した時に、自衛隊がすぐに（合法的かどうかを悩むことなしに）動けるようにしておくことが必要だと思います。「危機管理」のためには、何かが起こった時に、具体的にどう動くかをあらかじめ決めて、すぐに対応できるように準備しておくことが大事なのではないでしょうか。
いろんな難しいことを考えさせられた本でした（汗）。あなたなら、どう考えるでしょう？　読んでみてください。