『きちんと知りたい! ドローンメカニズムの基礎知識』2018/6/30
鈴木 真二 (監修), (一社)日本UAS産業振興協議会 (編集)

ドローンの機体や操縦システムに関するメカニズムを、分かりやすくまとめてくれた本で、飛行の基本原理をはじめ、ローターやモーター、各種センサーといったパーツや、無線システムなどドローンを飛ばすシステムに至るまで、その仕組みを解説しています。
ドローンは「オス蜂」を意味する英語で、その名称の起源は米国製の標的機(ターゲット・ドローン)だそうです。無線技術の発達により遠隔操縦で飛行機を操縦できるようになった1930年代に、地上からの射撃練習を行う際の標的として飛ばす飛行機として、英国で有人飛行機を無人機に改造したものを見学した米国高官が、その必要性を痛感して、米国でも開発を指示したのだとか。
「第2章 ドローンのメカニズム“基礎編”」や、「第3章 ドローンのメカニズム“上級編”」では、ドローンの構造や姿勢・位置制御などのメカニズムを簡潔に説明してくれます。
例えば「なぜプロペラは4つか?」については、「プロペラは質量のある回転体なので、回転させるとジャイロモーメントが発生する。これを打ち消すために、隣り合うローターは互いに逆回転して反転トルクを打ち消す」ことがイラストで説明され、「なぜ空中停止ができるの?」では、「空中停止には、姿勢制御と位置制御の2つの重要な機能が必要。姿勢制御と位置制御は、時として相反する要素で、相反する作用をうまくバランスさせる技術が重要。」というようなことがイラスト解説されています。
また「ドローンはなぜうるさい?」では、「ドローンは複数のプロペラで空気をかき混ぜてしまうので、空気の摩擦音が発生します。また、モーターからも騒音が発生します」と説明されていましたが、個人的には、ドローンはある程度は騒音を出してくれた方が、むしろ安全に運用できるような気がします。ふと目をあげたら、すぐ近くの空中にドローンが浮かんでいた……なんていう事態の方が気持ち悪いような……。
さらに、なんと「水陸両用のドローン」の開発もすでに進んでいるようで、米国ラトガース大学の水陸両用ドローン(Naviator)は、「完全防水を施したマルチローター型ドローンで、空中から着水し、そのまま水中に沈み、ローターをゆっくり回すことで水中を空中のように移動します。そして、水中から水面に浮上し、そのまま水面から離水して飛行することができます。」なのだとか! まるでスパイ映画の小道具みたいですね!
その他にも、「第4章 ドローンの操縦と飛行メカニズム」では、「操縦免許は必要?」という疑問に対して、「我が国ではドローンの操縦免許はないが、許可を要する飛行を行う際には、一定の知識・操縦技能が必要」などの説明があります。
これ一冊読むだけで、ドローンに関するだいたいの概要が分かったような気になれる、ドローンに関する総合的な知識を、広く浅く教えてくれる本でした。
今後、ドローンはAI(人工知能)を搭載することで、さらに洗練され、安全な自動操縦が可能になっていくことでしょう。また実用化が進むとともに、法整備も進んでいくものだと予想されます。ドローンの技術や、それを取り巻く社会状況は、今後もどんどん変わっていくと思いますが、2018年現在のドローンの状況をざっくり知るのには有用だと思います。興味がある方は読んでみてください。