『③和紙の徹底研究(特徴・比較) 和紙のよさを見直そう!(世界遺産になった和紙)』2015/7/22
紙の博物館 (監修)

「世界遺産になった和紙」シリーズ3作目で、空気を通す、伸び縮みするなどの和紙の特徴を詳しく解説してくれる本です。
すごく参考になったのが、「4 和紙の長所と短所は表裏一体」の、和紙の「短所」は見方を変えると「長所」にもなるという解説。
たとえば和紙の短所の「やぶれやすい、切れやすい」は、「うすく漉いた和紙は、やぶりやすく、ちぎり絵や造花などをつくりやすい。また、ナイフなどでかんたんに切ることができて加工もしやすい」と、長所としてとらえることもできるそうです。
そして「気密性がない」という短所も、「気密性が低いということは、通気性がよいということ(長い植物繊維がからみあっている和紙は、こまかなすきまがある)」ということなので、衣類の素材としても使われているのだとか。なるほど(笑)。
また「3 手漉き和紙と機械漉き和紙はどうちがう?」では、日本の和紙づくりの技術が他国へも伝えられていることを知ることが出来ました。例えば、無形文化遺産の「石州半紙」の作り方は、ブータンでも行われているそうです。文化交流や専門家の派遣などを通して、石州半紙の製造方法での紙づくりが行われるようになったのだとか。その他にも、ウズベキスタンの「サマルカンドペーパー」の復興でも、石州和紙が大きな役割を果たしたそうです。
でも……日本の和紙は、外国製の安価な「和紙風の紙」のために売れ行き不振に陥っているんじゃないのかなーと不安に感じてしまいましたが……よく考えると、もともと「紙作り製法」は中国から伝えられたものですし、日本の和紙の製法の優れたところも、日本国内だけで独占するよりも、世界の人々が製造できるようになって、人類の生活が豊かになるなら、その方がずっといいですよね☆ 和紙が今後も世界じゅうで活用されるよう祈っています。
そして最後の「10 和紙と地球環境」では、和紙生産の体制づくりについても書いてありました。
「コウゾを例にとると、洋紙の原料の木材とちがって、1年で収穫できるという利点があります。そして、コウゾは、ほぼ日本全国で栽培が可能です。」なのだそうです。
和紙の原料不足が予想されているそうですが、最近、里山の耕作放棄地や手入れされなくなった果樹園などで、野生動物による被害があいついでいるようなので、これらの場所の作物や樹木を「コウゾ」に変えていくと、野生動物の被害も縮小できるかもしれないなと思いました。素人考えですが……。
この本には、その他にも、日本の和紙づくりの特徴「流し漉き」の手順を写真で見ることが出来るなど、参考になることが色々ありました。読んでみてください。