『おうちで学べる人工知能のきほん』2017/11/13
東中 竜一郎 (著)
人工知能の概要を総合的に解説した本です。
最近は、私たちの身の回りにも人工知能を活用したアプリケーションやサービスが浸透してきました。この本では、スマホのアプリやWebサイトなど身近なものに使われている人工知能の基本的な仕組みを、総合的に学ぶことが出来ます。内容(目次)は次の通りです。
Chapter 01 知能って何だろう~知能は「脳」だけに関係する?~
Chapter 02 人工知能の基礎知識を学ぼう~これまでの歴史やビジネスへの応用~
Chapter 03 人工知能に探索させよう~人工知能の根幹を成す仕組み~
Chapter 04 人工知能に知識を教え込もう~知識の様々な表現方法~
Chapter 05 人工知能に学習させよう~未来を切り開く「学習」の仕組み~
Chapter 06 人工知能に言語処理をさせてみよう~人間の言葉を扱う仕組み~
Chapter 07 人工知能に対話させよう~人間のように対話するには?~
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Chapter 01は、人工知能ではなく「人間の知能」に関する解説です(笑)。確かに、人間の知能の特徴を知ることは、それを人工的に作ろうとしている人工知能を学ぶ上でも大切なことですよね。流行の「ディープラーニング」は、人間の脳のニューラルネットワークに着想を得たものですし。
そしてChapter 02では、人工知能の研究の歴史や、ビジネスへの応用についての概説があり、Chapter 03では人工知能の基盤技術の一つ「探索」について、カーナビを例に人工知能がどのように最短距離を見つけるかが説明され、Chapter 04では、知識の種類や表現方法、エキスパートシステムの解説があります。
……ここまで、「入門書のようなタイトルなのに、どんどん難しくなっていくなあ」という印象でしたが、この後のChapter 05になると、数式がいっぱい出てきて、統計学などの専門知識がない方には、ちょっと難しすぎるかもしれません(汗)。
「機械学習には、「教師あり学習」、「教師なし学習」、「強化学習(試行錯誤で最適な行動の仕方を学習)」の3種類がある」という機械学習種類の概説の後、いきなり「回帰分析」になります。「教師あり学習の手法のひとつに「回帰分析」というものがあります。」の一言で、回帰分析の説明に入っていくのですが、初心者には「教師あり学習」と「回帰分析」の結びつき方が、そもそも分からないのではないでしょうか。できれば、人工知能の学習方式に回帰分析が使われている実例などを紹介した後で、それに使われている学習の原理として「回帰分析」や「重回帰分析」に入って欲しかったな、と感じました。もっとも私自身がニューラルネットワークの学習をした時には、「回帰分析」どころか、いきなり「シグモイド関数」の説明から始まったような記憶があるので、この本の説明が統計学などでなじみのある「回帰分析」から始まるのは、やっぱり「初心者に優しい説明」なのかもしれない、とは思うのですが……(汗)。
えーと、ということで、「おうちで学べる」入門書としては難しく感じましたが、これらの学習方式の説明自体は、専門的なことをかなり分かりやすくまとめてあるので、入門者の方よりも専門家の方にとって「自分の知識の復習」や「他の人に説明するときの参考」として役に立つような気がします。
人工知能は、どんどん身近な存在になってきています。数式が多くて、ちょっと難しく感じますが、「経路探索」「ディープラーニング」「言語処理」などの人工知能の基本原理を、総合的・具体的に学べる本だと感じました。人工知能に興味のある方は、読んでみてください。