『未来予測入門 元防衛省情報分析官が編み出した技法 (講談社現代新書)』2019/10/16
上田 篤盛 (著)

 自分の周辺の未来、自分が予測する業界の今後を可能なかぎり正確に予測する技術……安全保障の最前線で磨かれた機密メソッドをベースに、それを一般向けに改良した技法を初公開してくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 未来予測とは何か
第2章 情報分析の技法
第3章 未来予測のための情報分析法
第4章 ケーススタディ1 将来有望な職業を予測する
第5章 ケーススタディ2 未来のベストセラーを予測する
第6章 ケーススタディ3 これからの世の中を予測する
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 どの章もとても参考になったのですが、中でも読み応えがあったのは、「第3章 未来予測のための情報分析法」。防衛省情報分析官としての経験をもとに、「未来予測」を行う技法を、具体的に詳しく教えてくれるのです。
「未来予測の手順」の概要は次の通りです。
1)「問い」の設定
2)「枠組み」の設定
3)収集&整理
4)現状分析&未来予測
5)戦略判断……(そして1に戻る)
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 また「未来を予測するための9つの分析手法」としては、次のものがあるそうです。
1)問いの再設定:自分自身の思考に多角的な視点を持ち込み、論点を明確にしていく
2)アウトサイド・イン思考&フレームワーク分析:
アウトサイド・イン思考=大きな外部環境に着目してから、徐々に内部環境を分析、
フレームワーク思考=物事の本質を見極めるために構成要素に分解して漏れなく分析
3)システム思考:事象と事象の相関関係・因果関係を明らかにし、未来予測やシナリオ・プランニングのための推進力(ドライビング・フォース)を特定する。(図式化する方法:構造図、氷山図、関連樹木図、ロジックツリー、ループ図、要因相関図)
4)クロノロジー分析:現状分析における「縦の比較」で使用される代表的な手法。過去から現在までのトレンドを把握し、特定事象の発生をもたらした影響要因や影響力を特定。
5)マトリックス分析:現状分析における「横の比較」の代表的手法。「縦の比較」と同じく図式化することで、生起中の事象の特徴や競合会社の戦略、顧客のニーズなどを明らかにする
6)アナロジー思考:未来予測における仮説の立案と検証のための代表的手法。一つの事象から、類似した別の事象の発生などを予測する。
7)ブレーンストーミング&マインドマップ
ブレーンストーミング=一つの事象から自由発想的、体系的に仮説やアイデアを案出、
マインドマップ=1枚の紙の中央に表現したい概念やキーワードを書き、そこから連想されるキーワードを放射状に書いていく。
8)4つの仮説案出:予測における仮説の案出と検証、あるいはシナリオ・プランニングの代表的な手法。特徴ある4つの未来シナリオ(2軸の4象限に4つの仮説)を立案する。
9)シナリオ・プランニング:未来に関する複数のシナリオと対応する戦略を一連のプロセスとして案出する。「何をすべきか」、「どうすべきか」といった戦略判断や戦略策定までが含まれる。
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 第3章までは、「未来予測」に使うための技法の基礎知識の解説なのですが、とても実践的に勉強になったのが、第4章以降の3つのケーススタディ。身近な3つの事象を未来予測するために、どの技法をどのように使うのかを、実際のケースで紹介してくれるのです。これらを読むことで、これまでの教科書的な知識を実際の予測にどう使うのかを理解しやすくなっています。次のようなヒントももらえました。
・未来予測は、「ほぼ確実にやってくる未来」を中心に「不確実な未来」を、つまり「既知の領域」に「未知の領域」を組み合わせるやり方が一般的。
・データや選択肢が膨大かつ複雑であって可視化しなければ一度にその概念がとらえられない場合には、マトリックスを活用すると便利。
・「4つの仮説案出」で、多数の影響要因から2軸を特定するコツは、他のものより重要度が高く、なおかつ「不確実性が高そう」な要因を選ぶ。(例:少子高齢化など確実性の高いものは「規定」としてシナリオに組み込めばよい。また天災など不確実性があまりにも高すぎるものは予測対象としては不適当。このようなものを排除しつつ、「重要」で「不確実性が高く」、時間をかけてでも予測する価値があるものを選んでいく)
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 世界の情報機関がごく普通に使っている思考法・分析手法を駆使することで、より説得力のある「未来予測」を行うことが出来ることを教えてくれる本でした。ここでは概要しか紹介していませんが、本書内には具体的な事例が多数掲載されていて、実際に自分で「未来予測」を行う場合に、とても参考になると思います。とても勉強になるので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 上田さんは、他にも『武器になる情報分析力』、『戦略的インテリジェンス入門』、『インテリジェンス用語事典』などの本を出しています。
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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