『スタンフォードの眠れる教室』2022/4/13
西野 精治 (著)

 効率よく心地よく眠れる方法を、その科学的エビデンスとともに教えてくれる本で、授業内容は次の通りです。
0時間目 オリエンテーション あなたの睡眠負債はどのくらい?
2時間目 まずはここから! 「心地よい入眠」の授業
3時間目 日中の生産性を上げる! 「快適な目覚め」の授業
4時間目 それでも眠い?「眠気を消す日中の過ごし方」の授業
5時間目 睡眠で上げる! 「生活の質」の授業
6時間目 「子どもと家族の眠り」の授業
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「良い睡眠」というと何となく「早寝早起き」を思い浮かべてしまいますが、最近のアメリカでの調査では、早寝早起きは、健康、富、賢さに影響を与えていないことが分かったそうです。また睡眠時間は長ければいいわけではなく、むしろ長すぎるのは良くないのだとか! 平均睡眠(7.5時間)タイプに対し、短時間睡眠(3時間未満)タイプの死亡率は1.3倍、長時間睡眠(10時間以上)タイプの死亡率は1.4倍だったそうです……そうだったんだ。
 とても勉強になったのは、「1時間目 眠らなくても大丈夫! 「黄金の90分を制す」授業」。次のようなことが書いてありました。
「体と脳のメンテナンスや記憶の整理が行われるのは、深い眠りのノンレム睡眠。ここがしっかり取れていると、睡眠の質も上がります。一番深い眠りが出るのは入眠した直後のおよそ90分間なので、私はこれを「黄金の90分」と呼んで重視しています。」
 この「黄金の90分」では、次の5つの重要な生理現象が一番活発に行われているそうです。
1)脳と体の休息
2)記憶の整理・定着
3)ホルモンバランスの調整
4)免疫力アップ
5)脳の老廃物を取る
 ……ちなみに睡眠中には、次のようなことが行われているようです。
「(前略)睡眠には記憶の整理をする役割があります。記憶の定着過程にはいろいろな段階やルートがあって、深いノンレム睡眠である「黄金の90分」には、新しく覚えたことやエピソードを伴う記憶が海馬から大脳皮質に入り「長期記憶」として定着することが分かっています。(中略)
 また「忘れてしまいたいイヤな記憶」も「黄金の90分」で消去されると考えられています。最近の研究ではレム睡眠も記憶の消去に役立っているといわれています。
 さて、明け方になるにつれて多くなるレム睡眠は、記憶の整理をする時間だとわかってきました。自転車の乗り方や調理手順など「体で覚える記憶」が定着するのが深いノンレム睡眠だといわれていますが、レム睡眠では、物事の意味やその特性や、いつどこで何をしたかといったエピソード記憶を記憶する働きが強いといわれています。」
 ……へえー……睡眠は、とても大事ですね! 「2時間目 まずはここから! 「心地よい入眠」の授業」への期待がどんどん高まります。
 よい眠りのために「覚醒のスイッチをオフ」にする方法は、「深部体温を下げて、皮膚温との差を縮める」ことと「脳をリラックスモードに変える」の2つだそうで、具体的な方法としては、次のことが書いてありました。
・入浴から1~2時間後に皮膚温との差が1.7度に縮まるので、入眠しやすい。(入浴直後は体温が下がり切らないので、眠りにくい)。
・睡眠習慣は、できる限り固定したほうがいい。(時間と場所は固定する)
・入眠のために副交感神経を優位にするといい(一番手っ取り早いのは、目のまわりや首を「温めて」血管を拡張させること)
・寝る前に冷たい飲み物を飲む(深部体温が下降する)
 この他にも、入眠への音、香、飲み物、行動の成功パターンを組み合わせて「ポジティブ・ルーティン」を作ることなど、いろいろ紹介されていました。
 また「5時間目 睡眠で上げる! 「生活の質」の授業」では、運動の効用が次のように説明されています。
「朝でも昼間でも夕方でも運動は睡眠の質を上げますが、夜寝る前は激しい運動は避けましょう。運動して上がるのは体温だけではありません。ドーパミン、アドレナリンが出るなどしてテンションも上がり、交感神経が優位になります。寝つきが良くなるとはいえません。(中略)
 また、朝や昼に汗をかくほどの運動をすると体温が上下して眠気を誘うので、比較的夜に近い、夕方の運動がいいといえます。」
「一般的にいうと「睡眠の質を上げる」とされているのは有酸素運動です。筋トレよりもジョギングやウォーキング(後略)」
 この他、「就寝前のスマホの利用は睡眠や体のリズムに良くない」とか、「眠りにいい食べ物は成分がアミノ酸のもの」とか、「睡眠の質を上げる夕食は、塩分と油分が控えめなものを、眠る3時間前に少なめに。」など、他にもたくさんのことが紹介されていました。
 ……なるほど。この本に書かれているような「良い睡眠のための方法」は、すでに実行済のものが多かったので、安心しました(笑)。だからよく眠れているのかも……?
 なかなか眠れないなど睡眠で悩んでいる方は、この本に書かれている方法を試してみるといいかもしれません。でも、ご高齢の方の場合は、あまり「心配し過ぎない」ことも大切なのだとか。「神経質にならずに受け入れることも、一つの健康法です。」と書いてありました(笑)。
「良い睡眠」の方法を教えてくれる本で、とても参考になりました。みなさんも読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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