『絶景の成り立ちを学ぶ (ビジュアルで身につく「大人の教養」)』2022/2/9
山口 耕生 (監修)

 大地・水・火・生命・気象……地球が創った49の雄大な景観や驚きの奇観のフルカラー写真で、『絶景の成り立ちを学ぶ』本です。
「大地」「水」「火」「生命」「気象」をキーワードに世界中から選ばれた49の絶景を堪能できるだけでなく、その絶景が生まれた科学的な背景・成り立ちの秘密も、図解でわかりやすく解説してくれる素晴らしい本で、内容は次の通りです。
第1章 「大地」の絶景
(グランドキャニオン、トロルトゥンガ、ギアナ高地、ジャイアンツ・コーズウェイ、レンソイス・マラニャンセス、ナイカ鉱山、ナミブ砂漠、ザ・ウェイブ、セブン・シスターズ、ゴッシズ・ブラフ・クレーター、ソンドン洞窟、ヴィニクンカ山)
第2章 「水」の絶景
(ウユニ塩湖、ブルーホール、パムッカレ、アブラハム湖、ペリト・モレノ氷河、ヴィトナヨークル氷河、ホワイトヘブン・ビーチ、ハロン湾、モエラキ・ボールダーズ、コルディリェレーラの棚田群)
第3章 「火」の絶景
(キラウエア山、グランド・プリズマティック・スプリング、エイヤフィヤトラヨークトル、ニーラコンゴ山、イジェン山、ダルヴァザ・ガスクレーター、ダロル火山)
第4章 「生命」の絶景
(グレート・バリア・リーフ、ナトロン湖、アタカマ砂漠、エル・ロサリオ、ジェリーフィッシュ・レイク、キャノ・クリスタレス、フライガイザー、ムクドリのダンス、ワイトモ洞窟、バイカル湖、バオバブ街道、レインボー・ユーカリ、ツキヨタケ)
第5章 「気象」の絶景
(スーパーセル、オーロラ、真珠母雲、カタトゥンボの雷、蜃気楼、副虹、ブロッケン現象)
    *
「20億年にわたる浸食力が世界一の大峡谷を生んだ」アメリカのグランドキャニオン(大地の絶景)や、「海底が隆起し、塩の平原に水が溜まって「天空の鏡」が現れた」ボリビアのウユニ塩湖(水の絶景)などはとても有名ですが、知らなかった絶景もあって、迫力の写真に「おお!」と興奮してしまいました。
 例えば「第1章 「大地」の絶景」では、アメリカ・アリゾナ州の斜交層理の絶景「ザ・ウェイブ」。まさにその名の通りサーファーが波乗りしそうな風景! その成り立ちは次のようなもの。
「砂岩層の大地は水を吸収しない。そのため、この周囲で夏に雷雨が発生すると、雨が鉄砲水となって流れ、大地を削った。さらに風によって運ばれる砂の粒子も砂岩層を滑らかに削った。
 こうして水と風に少しずつ削られるなか、斜交層理の作用で美しい縞模様の地形が生まれた。」
 また、オーストラリア大陸中央部の「ゴッシズ・ブラフ・クレーター」も凄い。「恐竜全盛期に飛来した小天体の衝突跡、いわゆるクレーターである」とのことですが、スローモーション再生画像で見るような水面に落ちた水滴が作った王冠のよう……。
 さらにペルーの「地層ごとに異なる色のつらなりが虹色に輝く山」の「ヴィニクンカ山」の見事な色彩!
「地層(とくに地表に露出した地層)は、大気中の二酸化炭素を溶かし込んだ雨水や酸素と反応した化学風化作用を受ける。その際、地層に含まれている鉱物が溶解したり酸化したりして、さまざまな色になるのである。」
 この虹色の山肌は最近まで氷河の下にあったのですが、地球温暖化のために氷河が溶けて露出してきたそうです。それでこんなに「きれいに洗ったばかり」みたいな鮮やかな色なんだ……。
 また「第2章 「水」の絶景」では、「ウユニ塩湖(ボリビア)」はもちろんですが、ニュージーランドのモエラキ海岸の「モエラキ・ボールダーズ」という丸い石が転がる風景にも目を奪われました。この丸い石は、6000万年前に死んだ生物の遺骸を核として出来た球状の塊(コンクリ―ション)だそうです。
「第3章 「火」の絶景」では、闇夜の「イジェン山(インドネシア)」。火山から吹き出し続ける亜硫酸ガスが、すごく神秘的な青い炎になって山肌を流れ落ちているという怖いほど幻想的な風景。
 また、「ダルヴァザ・ガスクレーター(中央アジアのトルクメニスタン)」も凄い。炎がめらめらと燃え続ける直径約90メートルの砂漠の巨大な穴の写真ですが、なんとこれは、「天然ガス採掘調査の落盤事故でメタンガスが噴出し、燃焼させて使い尽くそうとしたが事故から50年以上経った現在でも燃え続けている」ものなのだとか! ただしメタンガス噴出量は減少中だそうです。
 その他、「ダロル火山(エチオピア)」の「塩分の結晶化、熱水の成分が形成する毒々しくも美しい極彩色の世界」も見事です。
「第4章 「生命」の絶景」では、真っ赤な「ナトロン湖(タンザニア)」。「塩水湖に生息するスピルルナが湖水を真っ赤に染め上げる」とのことですが、スピルリナって緑じゃなかったっけ? と不思議に思っていたら、次のように書いてありました。
「栄養補助食品としても知られるスピルリナは通常は緑色をしている。しかし強アルカリ性の塩湖であるナトロン湖では色素が赤系になるため、繁殖期には湖全体が赤く染まるのだ。」
 ……そうなんだ。
 そして、青白く光る星をちりばめたような「ワイトモ洞窟(ニュージーランド)」も素晴らしいのですが、これはなんと「天井から垂れ下がっている光の正体は「ツチボタル」の粘液の糸。ホタルと同じようにルシフェラーゼという発光酵素がルシフェリンという発光物質を酸化させて光る」というもので、この光で獲物をおびき寄せ、粘液を垂らして小さな昆虫を絡めとるのだとか……。
 また「レインボー・ユーカリ(インドネシア パプアニューギニア)」の木の幹は、お洒落な壁紙みたいなカラフルさ!(笑)。
「レインボーユーカリは葉だけでなく幹でも光合成を行っているので、葉の色素成分が樹皮にも含まれており、樹皮が剥がれると養分が途絶えて葉緑素が分解され、ほかの色素が出てくるのである」
 ……すごく不思議な光景です。
 そして最後の「第5章 「気象」の絶景」では、「豪雨、雷、竜巻……積乱雲が発達したあまりにも凶暴な雲」の「スーパーセル(アメリカ合衆国など)」の凄い写真が! うーん絶対に出会いたくないけど、見てみたいような気も……。
 見事な絶景写真とともに、その成り立ちの秘密も教えてくれる「ビジュアルで身につく「大人の教養」本でした。地学好きの人にとっては、お宝になりそうな素晴らしい本です。ぜひ眺めてみてください。お勧めです☆ 
   *    *    *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
<Amazon商品リンク>