『NISAで利回り5%を稼ぐ 高配当投資術 なぜバフェットは日本株を買うのか』2021/6/15
窪田 真之 (著)

 日本株ファンドマネージャー歴25年の窪田さんが、その運用ノウハウを分かりやすく解説してくれる本です。
「はじめに」には、次のように書いてありました。
「(前略)5年経っても10年経っても人気の落ちない「真の成長株」を見つけるのは結構難しいことです。
 それよりは、人々に嫌われて株価が低迷している株の中から「逆バブル」株を探しだして投資したほうがよい投資になります。」
「日本を代表する大型優良株で利回り5%のポートフォリオを組んでじっくり長期投資することが、長期的な資産形成の早道なのです。」
 ……そして、この基本方針のもと、具体的な株をあげて、ノウハウを教えてくれるのです。
「第1章 ウォーレン・バフェットが日本の5大商社を買う理由」には、有名な投資家のバフェットさんの運用方針が、次のように紹介されていました。これは窪田さんの運用方針とほぼ同じなのだとか。
「短期的な人気に惑わされず、長期的に値上がりが期待される株を買ってじっくり待つ。」
「グロース(成長)を重視しつつも、根っこにバリュー(割安)重視がある」
 そして続く「第2章 筆者が選ぶ「もしバフェ」5銘柄」では、お勧めの銘柄が具体的に紹介されていました。
 個人的に一番参考になったのは、「第5章 利回り5%、高配当株ファンドを自分で作る「ダウの犬」投資戦略」。
「銘柄選択にあたっては、単に予想配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に保有して減配になりにくい銘柄を選ぶことが大切です。」
 そして「減配リスクの低い高配当株を選ぶ4条件」は、次の通りなのだとか。
1)規模:売上高や時価総額が大きい
2)業種:不況に強い業種に属する
3)財務:借金が少ない
4)収益力:経常利益率が高い
 ……これらは、全部を満たす必要はなく1つか2つでよいそうです。
 また次の「ダウのイヌ戦略」も、失敗が少ない堅実な方法に思えます。
1)NYダウ採用銘柄(30銘柄)を配当利回りの高い順に並べ、上位10位を選び出します。その10銘柄に等金額投資します。
2)1年後に、もう一度NYダウ採用の配当利回り上位10社をスクリーニングします。1年前に投資した銘柄で、上位10社から外れた銘柄を売却し、代わりに新規に上位10社に入った銘柄を買います。
3)1年ごとに、この方法でリバランス(銘柄入れ替え)を続けます。
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 なお、「全部同じ業種では分散投資の効果があまり出ません。商社ばかり、銀行ばかりに投資するのではなく、商社・銀行を含む、なるべくたくさんの業種に分散投資してください。」だそうです。
 さらに「第9章 高配当株投資はNISAを使おう」では、NISAの仕組みをわかりやすく解説してくれます。
「高配当利回り株への長期投資には、売買益や配当金が非課税になる「NISA(ニーサ)」口座を使うことをお勧めします。「つみたてNISA」でも非課税投資はできますが「つみたてNISA」では投資信託にしか投資できません。個別株を買うには、NISAを選ぶ必要があります。」そうです。
 また「やってはいけないNISAの3大失敗」は、次の通りなのだとか。
1)NISA口座を開く前に株を買って、後からNISA口座に移そうとしたが、移せなかった。
2)昨年12月に駆け込みでNISA口座を開いたが、12月中に何も買わなかった。(その年の分の非課税枠は消滅してしまう)
3)20年に課税口座で10万円の売却益をだし、NISAで10万円の売却損を出したが、損益通算できなかった
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 この章には、この他にも、どちらのNISAを選ぶべきか迷っている人のための判断のアドバイスもありました。「NISAもつみたてNISAも、途中で売却すると非課税枠は消滅する。また非課税枠を得てから、NISAなら5年後、つみたてNISAなら20年後に消滅する。」などの留意点があるようです。
 そして最後の「第10章 「株主優待」を上手に活用しよう」では、株主優待の魅力とリスクが、次のようにまとめてありました。
1)効率的に優待を獲得するには、最小投資単位(100株)で多数の銘柄に分散投資するのが有利
2)優待券はぜひ使いたいと思うものから選ぶ。
3)配当利回りを見て、総合的に有利なものを選ぶ
4)権利取り直前に株価が大きく上昇しているものは投資を避ける
5)業績不振銘柄や、不祥事を起こしている銘柄は避ける
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 株価の変動に一喜一憂するのが面倒なので、株式投資はあまりしたことがありませんでしたが、この本の投資方法はかなり堅実そうに思えたので、とても参考になりました。ただ……本書が発行された時までは、日本の株価は全体として上がっていましたが、残念ながら現在(2022年5月)は、ロシアのウクライナ侵攻が始まったこともあり、株の値動きが不安定になっているようです。それでも本書でのお勧め銘柄はいぜんとして堅実なのだとは思いますが……実際に投資する場合は、最新情報を確認して自らの判断で選んでください。
 株式投資の基礎知識(NISAなどを含む)や堅実な運用方法、お勧めの具体的銘柄や、個人投資家がやりがちな失敗談を紹介してくれる本で、とても参考になりました。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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