『マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿 宇宙の物質の起源に迫る (ブルーバックス)』2021/12/16
田中 雅臣 (著)

 人類がこれまでに得た宇宙の観測手段――可視光の望遠鏡、赤外線、電波、X線、さらに近年では「ニュートリノ」を用いた素粒子天文学や重力波天文学を組み合わせ、これまで解明されていなかった「宇宙の謎」を解き明かしているものが「マルチメッセンジャー天文学」。その研究者の田中さんが、超新星爆発などの実際の観測データを紹介しながら、マルチメッセンジャー天文学の基礎から最新研究までを徹底的に解説してくれる本で、天文学研究の最前線を知ることができます。
 本書の1部ではマルチメッセンジャー天文学の準備として、様々な種類の電磁波で見た宇宙の姿について説明、2部ではマルチメッセンジャー天文学のメインターゲットとなる超新星爆発や星の合体現象などの様々な宇宙の爆発現象の紹介、3部では重力波とニュートリノの観測について、最後の4部ではマルチメッセンジャー天文学で見えてきた新しい宇宙の姿について説明してくれます。
 かなり詳しい部分まで解説してくれるので、読むのはとても大変でしたが、とても勉強になりました。
 なかでも「4章 超新星爆発」の星の一生の話は、概要は知っていたのですが、星の「たまねぎ構造(中心が鉄、その周りにケイ素、さらにネオンやマグネシウムのように球殻状に異なる元素が分布する構造)」がその一生の流れと関係していることを知らなかったので、すごく興味津々でした。
 星の一生は、まず宇宙空間のガス(気体)が重力(万有引力)で集まることから始まります。そして星が出来て中心部が高温になると核融合反応(水素)が起き、十分なエネルギーが取り出されるようになると収縮が止まって、それによる力が重力と釣り合うことで安定した形を保っていきますが、その燃料が尽きると重力の方が勝って潰れていきます。でも……この圧縮が進んでいくと、より熱くなるので今後は水素の核融合で作られたヘリウムが燃料となって再び核融合が始まるのです。そして「大質量星」の場合はこの後、同じように炭素の核融合が始まり、続いてネオンが……のようにしながら最も安定な鉄ができるまで続くのですが、鉄の後の核融合は出来なくなるので重力による収縮を止められなくなり、最後には超新星爆発を起こしていく……という一連の流れがあるそうです(もちろん本書内ではもっとずっと詳しい説明があります。)
 この他にも、「私たちは自分の体の中からもニュートリノを放出している」なんていう驚きの話もありました。私たちの体内にはカリウム40という放射性元素がほんの少しだけあり、その半減期は10億年もあるのですが、体内にある微量のカリウム40でも原子核の数にすると膨大な数になるので、1秒になんと約3000個ものニュートリノを放出しているそうです! 一人の人間からでさえ、こんな膨大な数が出ているのに、スーパーカミオカンデでも観測しにくいなんて……信じがたい気がします。スーパーカミオカンデの感度が上がったら、膨大なノイズに悩まされるのでしょうか? そんな新たな疑問もわいてしまいましたが……この本には、このような興味深い記事がすごくたくさんあって、とにかく読み応えがあるのです☆
 終盤近くには、コラム「GW170817のマルチメッセンジャー観測(重力波を放った天体の観測)」があり、このイベントの裏側で実際に研究者たちが何をしていたかが紹介されるのですが、この天文の一大イベントで、研究者たちが先を争うように観測・論文作成に励んだ状況がすごくリアルで、天文学が好きな方や天文学をめざす学生の方には、とても参考になるのではないかと感じました。
 鉄より重い元素はどのように作られるのか? ブラックホールの合体、中性子星の謎、そして、宇宙の始まりに何が起こったのか? これら宇宙への根源的な問いに迫るマルチメッセンジャー天文学について、分かりやすく知ることが出来る本でした。天文学が好きな方はもちろん、科学が好きな方もせひ読んでみてください。とても勉強になります。だんぜん、お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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