『プリンストン大学教授が教える “数字”に強くなるレッスン14』2021/6/5
ブライアン・カーニハン (著), 西田美緒子 (翻訳)

 プリンストン大学でも教えられている「数字が読める人の思考法」を、14のレッスンでやさしく解説してくれる本です。
 プリンストン大学教授が教える数字……というフレーズに、ついビビッてしまいましたが、これを読むのに必要な知識は「小学校の算数」だけだということで、頑張って読み始めてみたら……レッスン1つ1つが意外に短い上に、難しい数式はまったく出てこないので、どんどん読み進められました。「はじめに」で、カーニハンさんは、次のように言っています。
「読者のみなさんが日ごろ目にする数字について、理にかなった疑問を抱き、論理的に考え、言っていることがホントかウソかを判断し、重要な決断をするために必要があれば自分で計算できるよう、この本でお手伝いしていきたい。」
「ここで必要になるのは小学校の算数のみで、小学5年生か6年生までの算数を知っていれば大丈夫。あとは、頭を使い、知っていることをフルに活かせばすむ。やってみれば、楽しいと思えてくることだろう。」
 そしてこの本で強調されていたのは、数字に強くなるためには、とにかく「自分の頭で推定する」力を育むこと。カーニハンさんは、次のように言っています。
「自分が知っている、または経験のある具体的なことからはじめて、それを一般的な状況へと広げていく。」
「推定の計算は大まかでいい。誤差は相殺される傾向があり、自分なりに考えた仮定が正確な必要は少しもなく、ただなんとなく理にかなっていればいいだけだからだ。」
「まず自分ひとりの力でやってみることが上達するための早道だ。」
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 大きい数字になってくると、具体的なイメージがもてずに、その数字が正しいのかどうかがとても分かりにくいですが、そんなときは、「自分の知っている具体的なこと」に縮小してみるといいそうです。
 例えばアメリカ全体で自動車が何台あるかを推定する時には、まず自分の周囲には何台あるかを考えます。自分の家では家族全員が1台ずつ保有しているなら、国民の数が自動車の数になりますが、通常子どもや老人は持っていませんし、駐車場が高い上に公共交通機関が発達している都市住民も持っていないかも、という推定を追加すると、国民の数に3分の2を掛けたぐらいになるんじゃないか……という感じに、推定をより正確なものに近づけていくことが出来るのだとか。
 なーるほど!
 こんな感じで、一見すると無理そうな数の推定も、自分に理解できる数に縮小してやることから始めると、なんとか出来るようになることを具体的に教えてくれるのです。
 またニュースなどでも「単位(ヤードとメートル)」や「数字の桁数(ミリオンとビリオンなど)」を間違えて報道していることが多いことも教えられました。この間違いにも、上記の「推定方法」を使うと、気づけるようになるようです。
 そして、とても役に立つ「騙されないためのアドバイス」も教えてもらえました(もちろん本書の中では、もっと詳しく説明されています)。
1)警戒信号に注目しよう(例えば、桁数の多い数字が大きすぎる・小さすぎると感じたら、まず自分自身に影響を与えるものまで縮小して考えてみよう。そうすると妥当なものかを判断しやすい)
2)情報源に注目しよう(不注意による間違いではなく、間違った方向へ導くために意図的に間違っている、事実をねじ曲げている場合がある)
3)いくつかの数字、事実、近道を覚えておく(人口、速度、大きさ、面積、物理的定数と換算率など)
4)自分の常識と経験から考える
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 この他にも、統計やグラフのトリックを見抜く方法など、「数字に強くなるレッスン」をいろいろ学ぶことが出来ました。
 ただ……この本で取り上げられている例は、アメリカのものばかりで、しかも単位がほぼヤード・ポンド法、ドルで記載されているので、日本人の私にはピンとこないものが多いのがとても残念でした。レッスン1に「単位の換算表」は掲載されているのですが、ヤードやドルの部分はメートルや円に換算し直して書いてもらえると、もっと読みやすかったように思います。もっとも単純に換算すると、100ドルの部分が12800円などのように妙に半端な数になってしまうかもしれませんが、この場合は「1ドル100円として換算してあります」と冒頭に表記するなどして、100ドルを1万円と表示すればいいのではないでしょうか(推定は概算でいいとカーニハンさんも言っていますし)。
 そういう意味でちょっと読みにくい部分はありましたが、読む価値は十分あったと感じました。
 今は、文系・理系を問わず「数字を読む力」が求められる時代だと思います。私と同じように「数学が苦手」だけど、できれば「数字を読む力」を向上させたいと思っている方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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