『あなたの老後を助ける ケアマネさんの仕事がわかる本』2020/12/8
沖藤 典子 (著)

 介護される人とその家族にとって頼りになる「ケアマネさん(介護支援専門員)」の資格、役割、仕事上の苦労とホンネまで含めて全方位的に紹介してくれる本です。(なお、本書で取り扱っているケアマネは、「居宅」の「要介護者」、つまり「要介護1~5までの介護認定を持つ」方々のケアマネだけで、「介護施設」や「要支援1・2」のケアマネは対象外だそうです。)
 ケアマネさんの主な役割は、次の5項目だそうです。
1)アセスメント(課題分析):面接してさまざまな情報の収集・状態把握、生活上の課題分析(現実の生活と希望から、どのようなサービスを提供していくか
2)ケアプランの作成・介護サービスの調整:利用者の希望やアセスメントの結果をもとにケアプラン(原案)作成
3)サービス担当者会議の開催:会議及びケアプランの説明・同意・交付
4)モニタリング(状況把握、継続的アセスメント):毎月1回以上、利用者と面接、ケアプランの実施状況や評価、ケアプラン変更の必要性
5)給付管理
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 そして頼りになるケアマネさんとは、次のような人だそうです。
1)制度などを分かりやすく説明してくれる人(勉強している人)
2)話をよく聞いて、本人や家族の立場に立ってくれる人
3)公正中立的で、他者サービスや地域にも広く情報を持っている人
4)折り返しの連絡をくれること
5)ケアプランの変更や苦情処理の対応が早い人
 ……確かに、こんなケアマネさんに担当して欲しいと思います。
 高齢者の生活を支援するケアマネさんには、本当にいろんな苦労があるようです。なかでも無報酬の「名もなき業務が増えている」ことが気になりました。例えば、次のような感じ。
・家電が使えなくなったという高齢者からの相談(違うリモコンを使おうとしていた、壊れた家電を新製品に変えると使い方が分からない、等々)
・介護サービスについて説明しても、サービスを契約してもらえないと無報酬
・介護保険にないサービス、たとえば配食サービスや緊急通報サービス(これらはもちろん実費)などを利用したいという相談を受けることもあるが、そういうサービスについて教えてあげても無報酬
 ……その他にも、いろんな「名もなき業務」がありました。これらの「名もなき業務」は高齢者の方にとって切実な問題も多く、ケアマネさん以外に相談する人がいない高齢者の方も多いと思うので……恐らく今後も増えていくことが予想されます。「介護保険」というのは、高齢者の方の日常生活を支援するためにあると思うので、これらの「相談業務」に要した時間にも、ある程度の報酬を払うべきではないのかなーと考えさせられました。そうでない限り、「それは私の仕事ではないので、相談に乗ってあげられません」と断られるケースが増えそうな気が……。現在は、ケアマネさんの「好意」で対応してくれることが多いようですが、それではいつか限界がきてしまいます(ケアマネの志願者は激減中だそうです)。今後、介護保険の見直しの時には、この点がぜひ改善されて欲しいと願っています。どうしてもこれらの「名もなき業務」に報酬が払えないなら、ケアマネさん以外の「日常生活よろず相談窓口及び仕事人」が必要になるのではないでしょうか。
 介護される人とその家族にとって頼りになる「ケアマネさん」について、総合的に紹介してくれる本でした。私たちは(若死にしない限りは)誰もがみんな老後を迎えることになるので、そろそろかなと感じてきた方は、「介護保険」や「ケアマネ」さんについても、知っておいた方がいいと思います。ぜひ一度、読んでみてください。
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