『スタンフォードの心理学授業 ハートフルネス』2020/10/22
スティーヴン・マーフィ重松 (著), 島田啓介 (翻訳)

 何が起こっても乗り越えられる力、それが「ハートフルネス」。スタンフォード大学で教鞭を執る心理学者のマーフィ重松さんが、ハートフルネスを教えてくれる本です。
 ハートフルネスというのは、マインドフルネスと似たようなものかと思っていましたが、少し違いがあるようです。この本では、次のように書かれていました。
「ハートフルネスは、小さな自我を越えた大いなるものとつながることによって、目的を見いだすことに重きを置きます。ハートフルな生き方は、他者の人生をより良くすることに意味を見いだすのです。」
「(前略)マインドフルネスはひとりで行う実践です。しかしハートフルネスは、コミュニティづくりの明確な目的を持ち、オープンに直接人とつながり、自分が大いなる存在の一部であるという気づきを持った集合的な取り組みなのです。」
 マインドフルネスよりも、より社会に開けているのがハートフルネスのようです。
 そんなハートフルネスを育てるための次の8つの道が、この本では丁寧に説明されていました。この番号の順番にハートフルネスの段階が上がっていくのかな、と思ってしまいましたが、実はそんなことはなく、数字には特別な意味はないそうです。
「ハートフルネスを育てる8つの道」
1)初心
2)ヴァルネラビリティ(開かれた弱さ)
3)真実性
4)つながり
5)深く聴くこと
6)受容
7)感謝
8)奉仕
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 またハートフルネスを日常生活に応用できるようにするためのエクササイズも教えてもらえます。例えば、「不完全こそ完全(自らの不完全さを知れば、ありのままの自分を受け入れることができます)」というエクササイズは、以下の通りです。
1)自分の弱点について振り返り、書き出しています
2)目を閉じて3回深呼吸します。深く吸って、ゆっくりと吐いてください。
3)自分に3回言いましょう。「私は最善をつくしている。完全である必要はない」
4)目を開いて、書き出したリストを見ます。一つひとつについてどう感じますか?
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 本書の中では、心に響くたくさんの文章を見つけることが出来ました(以下にいくつか紹介させていただきます)。
「ハートフルネス」は深い優しさに満ちています。読むと、たくさんの「気づき」を得られると思いますので、みなさんもぜひ読んでみてください。
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「あなたをはじめ誰でもが、生きている限り(最後の一呼吸まで)つねに変わっていく力を持っています。」
「私たちはみな、ヴァルネラビリティ(開かれた弱さ)を感じています。(中略)ヴァルネラビリティの中に、初心の鍵になる目覚めの種があります。私たちは、新鮮な目で世界をとらえ直し、驚くべき可能性に踏み出すことができるのです。目覚めは、人生の喜び、不思議、美しさへの無限の可能性をもたらします。」
「ハートフルネスは初心とマインドフルネスから始まり、個人的な健康の向上をはるかに超えていきます。初心は、治癒と語源を共有する好奇心から発します。そこから、大切な相手に注意を向ければ、コンパッションによる癒しの可能性に接近できるのです。」
「ハートフルネスの道を歩み続けるためには、持続的な努力と日々の実践が欠かせません。理想に向かっていくと同時に、今の自分とその立場を誠実に受け入れることも必要です。」
「真実で嘘がないとは、言葉と行動が一致し、自らが信じること、教えることに従って行動し、人の考えに影響されないことです。」
「自分が真実でいれば、自分がマインドフルであるだけでなく、思いやりで人とつながるハートフルネスが育っていきます。そこから発した奉仕の精神と責任ある行動が、私たちを生き生きとさせるのです。」
「相手の思いに関心を向け、理解し、共感し、その心の状態に対応することが、自分自身の不安や、自己陶酔や、孤立から解放してくれます。傾聴は与えることと受け取ることが同時に起こるとても大切なギフトであり、他者とのつながりをつくる方法なのです。」
「感謝の起源は、他者に共感する能力とつながりの感受性です。感謝を感じる体験は、そこから起こす行動と合わせて、社会的な関係性をつくり、それを強化します。」
「人の幸福を向上させようとする行動は、それをなす側にも大きな幸福感を与えるのです。」
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