『ものづくりからの復活―円高・震災に現場は負けない』2012/7/24
藤本 隆宏 (著)

 極端な円高対応による工場の海外移転、過剰な震災リスク対応による効率の低下……ものづくり経営研究の第一人者の藤本さんが、危機の時代に選択すべき戦略を大胆に提示してくれる本です。
 2012年に発行された本で、震災直後の危機的状況を心配した著者が、今(2012年)何をすべきかを提言している本ですが、震災からの復興が順調に進みつつある現在(2020年)、次の広域災害に向けて、しておくべきことを今までにちゃんとやってきたのかを再評価するのにも役立ちそうに感じました。
 本書の中心的な主張は、「統合型の良い現場を日本残そう」、「そこでの地道な能力構築と生産性向上を続けよう」、「貿易財現場は当面は設計の比較的優位を持ちやすいインテグラル・アーキテクチャの財を中心に国内現場を維持しよう」で、まさに現在の日本の会社にも必要なことだと思います。
「広域被災に対する方策で考慮すべき方針」には、次のようなことがあるそうです。
1)グローバル競争化において現場や商品の競争力の低下を伴わないこと
2)たとえば2~3週間程度の全面復旧期間を想定したサプライチェーンの頑健化・可視化を目指すこと
 ……要するに、震災を恐れるあまり過剰な対応をして経営を圧迫してしまうのではなく、「2~3週間程度」の猶予期間を設けて、復旧できるようにしておこうという主張で、とても現実的だと感じました。
 そのキーとなるのが、「サプライチェーン改革はバーチャル・デュアルで」。この「バーチャル・デュアル化」は、次のルールで実現させるそうです。
1)通常はあくまでも競争力を最高にする最適編成を選択せよ
2)どちらかのラインが被災したら、まず被災品目の在庫と需給状況を迅速に把握し、被災ラインの復旧が間に合うか判断せよ。間に合えば被災ラインの現地での復旧とせよ。
3)現地復旧が間に合わねば、ライン間で設計情報を移動させ、無事な方のラインを一定期間内に汎用ライン化せよ。並行して被災ラインの復旧も進め、復旧が完了したら、元のラインに被災品目を戻せ。
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 震災に負けない現実的な「ものづくり」を続けていくために、自分の会社が「バーチャル・デュアル化」出来る体制になっているか、再検討してみるべきでしょう。
「円高・震災に負けないものづくり現場をつくる」ために、具体的な提言をしてくれる本でした。ちょっと学術的(経済学)で分かりにくい部分もありましたが、毎年のように災害が多発する日本で、それに対応できる現場をどう作っていくかを考えるために、とても参考になると思います。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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