『すごく科学的: SF映画で最新科学がわかる本』2018/11/19
Rick Edwards (原著), Michael Brooks (原著), リック エドワーズ (著), & 2 その他

 絶滅種再生や人工知能、ブラックホールにゾンビまで、新旧の名作SF映画を題材に、最新の科学知識を教えてくれる本です。題材となっている映画は、次の通りです。
『オデッセイ』……火星旅行は身体に良い?
『ジュラシック・パーク』……絶滅種は再生すべき?
『インターステラー』……ブラックホールで何が起こる?
『猿の惑星』……遺伝子操作でチンパンジーは人間並みになる?
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』……タイムトラベルでできること
『28日後…』……ウイルス感染で人間はゾンビになる?
『マトリックス』……人間はシミュレーション世界を生きている?
『ガタカ』……遺伝学は完璧な人間を生み出す?
『エクス・マキナ』……人工知能は意識を持つ?
『エイリアン』……地球外生命体に会いたい?
   *
 これらの映画のストーリーに関する解説は本文中にはあまりないのですが、超有名なSF作品が多いので、ストーリー解説などなくても分かると思います。(一応、巻末に全映画の概要説明もあります)。
 そしてこれらの名作映画に「科学的な解説(つっこみ?)」を入れてくれるのが、著者のエドワーズさんとブルックスさんのお二人。本文の冒頭など、あちこちで二人が自由に映画評を、吹き出し形式で語っているのですが、これが「知的なんだか、アホなんだか、よく分からない」面白会話で、すごく楽しいのです☆
 しかも内容は、かなりきちんとした「最新科学的解説」になっています。もっとも、『インターステラー』のブラックホール話なんかは、ちゃんと理解できたわけではありませんでしたが……(汗)。
 それでも昔観た名作SFを思い出して、懐かしくなっただけでなく、その科学的な背景や、最新科学から見るとどうなのかについても知ることが出来て、とても興味深かったです。
 例えば、『ジュラシック・パーク』。映画では、「恐竜」として違和感のない地味な色彩(アース・カラー)の恐竜たちが登場していましたが、実際にはもっとカラフルだったのかもしれないのだとか。この本には、次のような記述がありました。
「恐竜によっては色合いまで明らかになっているのだ。(中略)動物の世界では、その体色の大部分は、メラニン色素を作るメラノソームという特別な形の細胞によって決まる。細長い形のメラノソームは灰色や黒色の色素を生み出すし、球状のフェオメラノソームは赤褐色の色素を生み出す。この2種類は恐竜で最もよく見られるメラノソームで、おそらく最初に進化したものだろう。
 恐竜の化石に含まれるメラノソームと、キンカチョウの羽に含まれるメラノソームとを比較したところ、ほぼ同一であることがわかった。つまり、化石に含まれるメラノソームの形や分布をマッピングすることで、その恐竜が実際にどのような色だったかがわかるのだ。
 この手法による最も見事な成果は、中国の遼寧省で発見された1億2500万年前のシノサウロプテリクスの化石から体色が判明したことだろう。シノサウロプテリクスはT・レックスの類縁種で、体長は1メートル超、飛ぶことはできず、肉食で、鳥類の先祖である。そして、解析の結果、オレンジ色と白の見事な縞模様をもつことがわかったのだ。」
 そんな派手な色の恐竜がいたんですか……イメージと違うなあ……。
 もっとも『ジュラシック・パーク』とは違って、現実には「DNAで恐竜を復活させる」ことは不可能なようです。DNAは時間が経つと劣化するので、「恐竜が生きた時代はあまりに遠い昔なので、今となっては、そのまま恐竜を復元できるようなDNAを見つけ出すのは無理だと考えられている。」のだとか。ちなみに、琥珀に閉じ込められた昆虫から取り出したDNAの劣化の度合いは、さらにひどかったそうです。……ちょっと残念ですね。
 まあ、個人的には、「本物の恐竜」でなくても、「仮想現実の恐竜」ぐらいで十分だと思いますけど。もしかしたら私たちはすでに『マトリックス』の世界、シミュレーション世界を生きているのかもしれませんし(笑)。
 ところで、この映画『マトリックス』に関しても、個人的には、「シミュレーション世界であっても、自分が生きている世界がすべてなのだから、それで十分なのでは?」と思ってしまいました。たとえ「選ばれた者」であったとしても、人間を救うために「リアル」に飛び出す必要がどこにあるのでしょう? シミュレーション世界に生きている自分は、もともと、すでに「人間」ではないはずですよね? たとえ「人間」をモデルに作られた存在だったとしても……。だから、電池パック化された人間を救えと言われても……そういう状態(歴史)を招いたのは、そもそも人間なわけだし、しかも「実体」のないはずの自分に、彼らを救う力があるとは信じられないのですが……(汗)それに、電池パックが人間に戻ったら、「自分」たちのシミュレーション世界の方はどうなっちゃうの? ……この『マトリックス』に関しては、著者のお二人もかなり混乱した感想を抱きつつ、興味深い解説をたくさんしてくれています。
 SF映画をより楽しませてくれた「科学的解説」本でした。解説も分かりやすいし、二人の会話も面白いので、他のSF映画についての解説も読んでみたくなりました。続編を期待したいと思います。SF映画好きの方は、ぜひ読んでみてください。
   *    *    *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
<Amazon商品リンク>