『避難の科学 気象災害から命を守る』2015/10/10
古川 武彦 (著)

 台風・津波・雷・竜巻・洪水・土砂崩れなど気象に由来する現象を科学的に説明するとともに、防災情報・避難情報を適切に利用する方法を教えてくれる本です。
 災害に備えるためには、自分が住んでいる場所がどんな環境なのかをあらかじめ知っておくことが大切だそうです。
「種々の災害に備えるためには、平素から自分の置かれている地理的な環境および災害環境を把握しておくことが重要です。一方、災害に備え、身を守るためには、何といっても現象の発生に関する情報を一刻も早く捉えることが肝要です。」
 そのために役立つのが「ハザードマップ(洪水、内水、高潮、津波、土砂災害、火山など)」。各自治体で作っていることが多いので、自分の住んでいる場所にどんなリスクがあり、災害の時にどこに避難したらいいかをきちんと確認しておきましょう。
 また気象情報を入手するのに役に立つ具体的なサイト情報も紹介されていました(気象庁、公益社団法人「日本気象協会」、ウエザーニュース、北海道放送・専門天気図、日本気象学会、米国大気海洋庁気象局などのサイト名)。
 そして避難のためのアドバイスとしては、例えば台風の場合には、次のような情報が。
「台風にともなう風は北半球では必ず左巻き(反時計回り)です。また、台風は移動スピードを持っていますから、ある点での風向・風速を観測しますと、台風のスピードと台風自身が持つ風の場が重畳した風となっています。したがって、台風の進行方向の右半円は左半円に比べて風が強くなり、逆に左半円では互いが打ち消すため弱くなります。したがって、航海術では、船舶が台風に遭遇する可能性がある場合は、台風の進路を見ながら、一般に左半円に入るように運航します。」
「台風では直径がしばしば1,000㎞に達し、発生から消滅まで1週間程度の寿命があります。」
 台風は多大の被害を出すこともありますが、予報を聞くことで事前に備えが出来ることが出来ることも多いので、直撃されそうな時には何らかの対策をしたいと思います。
 その他にも、観測システムの解説などもあり、これもとても興味深かったです。
 例えば、ウィンドプロファイラとドップラーレーダーの違いは、次の通りだそうです。
「ドップラーレーダーは降水粒子を媒介として風を測定するため、探知範囲に雨や雪が存在する場合にしか風を観測することができません。ウィンドプロファイラは大気及び降水粒子による散乱波を受信し風を測定することができる全天候型の風測定レーダーです。」
 また雷の予測は、電波に入る雑音や位相ずれを利用しているのだとか。
「雷が近づくとラジオにガリガリと雑音が入るのを経験します。この雑音を利用して落雷や雲間放電にともない発生する電磁波の発生を検知し、発生地点を評定するのが雷監視システムです。(中略)原理は、個々の検知局の5本のVHF帯受信アンテナで観測される電波の位相のずれから雷の方向を求め、同時にLF帯の電波を受信してその波形を解析し、結果を1秒ごとに中央処理局に送信しています。」
 へえー、雑音も役に立つことがあるんだなーと思って、なんだか楽しくなりました。
 自然災害の事例から災害現象の仕組み、災害への備えや避難方法などを総合的に学べる本でした。一度、読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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