『街角図鑑』2016/4/28
三土 たつお (著)
路上にある赤い円錐のパイロンや道路標識など、街中で私たちの生活に重要な役割を果たしているものは、どんな物で、どんな種類があるんだろう? そんな素朴な疑問に、写真で答えてくれる本です。内容は次の通りです。
パイロンのなかま
ガイドポストのなかま
防護柵のなかま
車止めのなかま
段差スロープのなかま
タイヤ止めのなかま
境界標のなかま
単管バリケードのなかま
舗装のなかま
縁石・排水溝のなかま
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好奇心が旺盛なので、街を歩くときも、つい道端のいろんなものに目が留まってしまいます。まして道路工事や電柱工事を見かけたときには、「どんな構造してるんだろう?」と、知る必要もないのに、思わず作業者の手元を眺めずにいられません(苦笑)。
だから、ビルの外壁についている送水口や、ブロック塀の穴の形、果ては道路端の擁壁まで観察しては、これは何故こんな形になっているのか? この形の方が安くできるのか? とか、いろんなことを考えてしまいます(汗)。でも……この観察はただの「気まぐれ」に過ぎないので、ちょっと不思議に思うことでも、後できちんと調べたりせずに、そのまま放置しているのですが……(苦笑)。
この本は、街にあるけど普通の人はあまり気にとめない、いろんなものを写真で総合的に解説してくれる「街角図鑑」です。パイロンやガイドポスト、防護柵、車止めって、こんなに種類があったんだなー……。
しかも、本当に「街角にある」状態で写真を撮っているので、リアル感がすごいです。漫画やイラストを描く方、ジオラマなどの工作が好きな方にとっては、資料写真としても活用できると思います。
写真に添えられている文章にもユーモアがあって、くすっと笑ってしまった箇所がたくさんありました。例えば積み重ねられたパイロンの写真には、「積み重なって休む習性がある」、「最終的にコロニーが形成される」とか書いてあって、まるで動物図鑑のよう……路上にあるものたちへの愛が感じられます。「防護柵の生態」写真には、「チェーンロックがかけられがち」なんて書いてあって、「あ、そうそう!」と、日常の何気ない「あるある」も楽しめました。
またマンホール蓋の項目では、「水柱を上げて、ゲリラ豪雨でも安全を確保」というコラム欄で、最新式のマンホールの蓋には、「水圧がかかると少しだけ蓋が浮き上がり、噴水のように水を放出する」という安全装置がついていることを知ることが出来ました。水圧で管に負担がかかって破裂するのを防ぐ仕組みだそうです。これ、大雨の時に実際にそういう状態になっているマンホールを見て驚いたことがあったのですが、あれは安全のために、わざとそうなるように作られていたんですね! 水を激しく噴き出しながら大きく浮き上がっているのを見て、雨上がりにマンホールの蓋がずれてしまって危険ではないかと懸念していたのですが、なんと「水圧が弱まると浮いた蓋が元通りにぴったり閉まる」ように作られているそうです! それは凄い。
他にも「水圧開放シャッター」(シャッターに開けられた小さな穴に消防隊がすごい水圧で放水すると、自動的にシャッターが開く仕組みのあるシャッター)など、知らなかったことをいっぱい教えてもらえました。
街歩きが、今までより、ちょっと楽しくなるような路上観察のための図鑑です。散歩が好きな方、美術や工作が好きな方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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