『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』2018/8/22
藤岡 換太郎 (著)

 日本列島の真ん中にある地溝帯「フォッサマグナ」について、解説してくれるとともに、その謎の解明に斬り込んでいる(考察している)本です。
 子どもの頃、学校で教えられた時、何だかよくは分からなかったけど、その名前のカッコよさで記憶に残った「フォッサマグナ」。日本列島の折れ曲がったところにある、大きな地溝帯だとは分かったけど、どうして見つかったのか、なぜ出来たのかとか、いろいろ謎が残っていました。でも……それも無理はなかったのです。なぜなら、フォッサマグナはいまだによく分かっていないそうですから。
 フォッサマグナ“Fossa Magna”(ラテン語で「巨大な地溝」の意味)は、ドイツの若き地質学者ナウマンによって発見されました。
「こんな光景がこの世にあるのだろうか。こんな大きな構造は見たこともない」
 明治維新後まもない日本の地質を調査中だったドイツの若き地質学者ナウマンは、長野県の平沢で激しい嵐に見舞われた翌朝、眼下に広がる異様な地形に言葉を失ったそうです。ナウマンは、それが世界に二つとない稀有な地形であることを確信しました。
 こうしてフォッサマグナに関する研究が始まったのですが、この地形は幾多の研究者の挑戦を拒みつづけ、その成り立ちも、本当の境界線はどこにあるのかさえも、いまだに謎に包まれているのだそうです。それでも、この本の「第1章 フォッサマグナとは何か」には、現在、分かっていることが概説されていました。その一部を以下に紹介させていただきます。
「「フォッサマグナ」とは、本州の中央部の、火山が南北に並んで本州を横断している細長い地帯のことを言います。ナウマンはフォッサマグナの範囲として、日本海側の新潟県糸魚川市~高田平野付近から、太平洋側の静岡県旧清水市~神奈川県足柄平野付近に至るまでの広い地域を示しています。(中略)
 東西に長く延びている日本列島は、このフォッサマグナ地域を境にして、地質的に分断されています。そして、フォッサマグナ地域とその東西では、地層や岩石などの地質がまったく異なっています。すなわち、フォッサマグナの東西では約1~3憶万年前の古い岩石が分布しているのに対し、フォッサマグナ地域の内部は、約2000万年前以降の新しい岩石でできているのです。そして、現在ではボーリング調査によって、フォッサマグナは地下6000m以上もの溝であることがわかっています。3000m級の山が二つも重ねられるほどの深さです。おおまかにいえば、この溝を覆い隠すように堆積物が積み重なったのが、現在の中部日本なのです。」
「フォッサマグナ」って、そういう構造になっていたんですね! そして次のような特徴があるそうです。
・フォッサマグナの地形的特徴
1)フォッサマグナは本州中部を横断する火山帯である。
2)海成層が内部に入り込んでいる
3)フォッサマグナは顕著な隆起をした
4)本州中部を横切るように南北性の地質構造(断層や褶曲)ができている
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 フォッサマグナを挟んだ東日本と西日本は、地質的に違っているだけでなく、生物区や植物区も違っているし、古地磁気方位も違っているそうです。東北地方の古地磁気方位は平均すると現在よりも西に偏っていたそうですが、西南日本では反対に、現在よりも東に偏っていたのだとか。この差異は、東北日本と西南日本がそれぞれ別々の回転運動をして、別々に現在の位置にまできたと解釈するのが妥当なようです。
 またフォッサマグナの北側と南側でも大きな違いがあるのだとか。「第4章 海から見たフォッサマグナ――フィリピン海の北上」には、次の記述がありました。
「(前略)北部フォッサマグナではたしかに日本海の拡大、すなわち大地が断裂することによってリフトができて、巨大地溝となったわけですが、南部フォッサマグナでは、伊豆・小笠原弧の衝突によって膨大な付加体が押しつけられた、つまり陸地が増えたのです。したがって、フォッサマグナの形成とは、単純に巨大な溝ができたということではなく、北部では大地を削り、南部では大地を足すというまったく逆の現象が、きわめて大規模に、かつ、15Ma(約1500万年前)というほとんど同時期に同じ場所で起きたことで、現在あるフォッサマグナの姿ができあがったということになります。これは地球科学的に見ると、かなりよくできた偶然ではないかと思われるのです。」
 個人的に子どもの頃からの謎だった「フォッサマグナ」について、いろいろなことを知ることが出来た本でした。「フォッサマグナ」について解明できたわけではありませんでしたが、日本列島の複雑な成り立ちの一因を知ることが出来て、とても興味深かったです。地学が好きな方は、ぜひ読んでみてください☆
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