『「ラクして速い」が一番すごい』2018/1/18
松本 利明 (著)

「ラクして速く」をモットーに、効率よく結果を出し続けている優秀なエリートたちの仕事の方法を教えてくれる本です。
 ムダな努力には、次の5パターンがあるそうです。
1)一生懸命がんばるけれども、やり直しが多い
2)すべてに全力投球で、疲れ果てる
3)責任感を持ちすぎて、仕事を抱えすぎる
4)根回しに労力と時間をかけすぎ、疲弊する
5)上司の指示通りにやるが、結果が伴わない
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 ……これ、昔の私に当てはまるものが、いくつもありました(汗)。「自分一人で」「真面目にコツコツと」愚直な仕事のやり方をしていたような気がします。そういう人は、ぜひこの本を読んでみてください。仕事の効率を上げるヒントを、たくさん見つけられると思います。
 この本の教えてくれる「ラクして速い」方法は、ずるい方法でも、魔法の方法でもありません。「集中すべきものと、捨てるべきものを正しく取捨選択する」など、よく考えてみると、ごく普通の方法です。こんな方法を全部で56種類教えてくれます。一例として、「第1章:一発で決める」の内容をあげると、次のような感じです。
第1章:一発で決める
・「長い1回」ではなく、「短い10回」をスピーディに
・100点を目指すより、「60点の出来」で突っ込ませる
・ロジカルに話すより、「重要なことは何ですか?」と聞く
・報連相ではなく、「ソラ・アメ・カサ」で確認する
・じっくり考えるより、一字一句すぐ確認する
・自分の価値観より、会社の価値観を賢く利用する
・論理的に分析するより、逆張りで考える
・パワポは本文ではなく、「パンチラ」から着手する
・刺さるパワポのコツ:「打ち合わせ」「プレゼン」「講演」の場合
・パワポをきれいに見せる色使いとフォントの基本
・エクセルデータの確認は、この「2ステップ」で!
・エクセルは「11センチ×18センチ」の大きな電卓でチェック
・文章は目で追うより、声に出して音読する
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「自分一人で」「真面目にコツコツと」仕事をしているタイプの人にとっては、最初の「「長い1回」ではなく、「短い10回」をスピーディに」や、「100点を目指すより、「60点の出来」で突っ込ませる」が、すごく参考になると思います。
「「長い1回」ではなく、「短い10回」をスピーディに」とは、仕事を依頼されたら、出来上がる前に「何度も見てもらって確認しよう」ということ。「ある程度完璧に仕上がったところで見てもらう」よりもずっと効率的だそうです。……確かに。間違っていた場合も、その方が、手戻りが少なくて済みますよね。それに依頼した側にとっても、進捗状況が早めに確認できて良いはずで、お互いのためになる方法だと思います。
 この本は、構成自体も「ラクして速い」ものになっています。なんと「目次」の項目が、そのまま「仕事のコツ56」の方法を表現しているのです。だからまずは目次の項目を読んで、気になった項目だけ中身の記事を読むことで、「ラクして速く」自分の弱点を克服できるヒントをつかむことが出来ると思います。
 目次項目は「標語」みたいな感じで、一見しただけでは、よく分からないものも含まれています。たとえば、謎の文章「報連相ではなく、「ソラ・アメ・カサ」で確認する」とは、「事実を伝えるとき(ソラ)に、「どうなりそうか?」(アメ)、「ゆえに、どんな打ち手や行動をすればいいか」(カサ)の3つをセットにして伝える」ことだそうです。他にもいくつか謎の項目はありますが、「目次だけで内容のエッセンスが把握できる」構成になっているのは、とても効率的だと思うので、報告書を作る時の参考にしたいと思わされました。
「仕事術」を教えてくれる本ですが、新人向けというよりは、会社での仕事がだいたい分かってきた若手中堅社員向けの本だと思います。今より効率的に仕事を片づけていきたい、と思っている方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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