Newton別冊『ゼロからわかる人工知能 仕事編』2018/12/17

 自動運転車、株価予測AIなど、AI(人工知能)は、めまぐるしい勢いで社会進出を進めています。これからの私たちの社会にとって、なくてはならないものとなるAIについて、ビジネスや娯楽での取り組みの最新動向を紹介してくれる本です。
 AIの紹介本はすでに多数発売されていますが、さすがNewton別冊だけあってイラストや写真をメインとした簡潔で分かりやすい記事が満載です。『ゼロからわかる人工知能 仕事編』というタイトルにふさわしく、AI(人工知能)がどのように作られているか、その学習方式についても解説してくれる総合的なAI入門書です。
 個人的に特に参考になったのは、「医療と人工知能」の「脳動脈瘤の判定AIの学習方法」。
「医療分野で使われるAIには、高い正確性が求められます。脳動脈瘤の特徴を正しく学習できているかどうかを確認するために、実際にAIに脳動脈瘤の位置を特定させてみて、それを医師がチェックするという作業が行われます。(中略)AIの学習結果は、人が見ても容易に理解できない形でコンピューターの中に記録されています。つまり、人がAIのデータを直接変更して、まちがった学習結果を修正することは困難なのです。」
 ディープラーニングによる画像認識は、「グーグルの猫」で有名になったように、「人が教えなくても(教師なし学習)で、AIが自ら試行錯誤して猫を認知できるようになる」ことを可能にするものですが、この脳動脈瘤の判定AIは、きちんと医師が正しい画像をチェックして教えています。特に医療分野では、正確な判定が厳しく求められるべきだと思いますので、この事例と同じように、可能な限り常に「教師あり学習」を利用して欲しいと感じました。
 また最も興味深かったのは、ゲームにおける人工知能研究の第一人者・三宅陽一郎さんのインタビュー記事「デジタルゲームで使われる人工知能~キャラクターは心をもっているのか」。現在、ゲームのキャラクターはAIによって、「自ら世界の状況を認識し、考えて行動」することが出来るのだとか! その自律型AIとは次のようなものだそうです。
「まず、知覚や聴覚といった感覚機能をキャラクターにつけます。それによりキャラクターは自分が今どのような状況にあるのかを認識できます。次に、意思決定です。これが最もAIらしい部分です。自ら情報を得て考えたさまざまな可能性の中から、一つの行動を選択します。あるいは、キャラクターが「弓を引く」という行動を決定したとしても、腕がうしろの障害物につかえるかもしれませんよね。その場合には、一歩前に出て弓を引くという行動のデザインも可能です。こうした一連の自律型AIのしくみを「エージェントアーキテクチュア」といいます。この技術は、ほぼ2010年までに確立しました。」
「ゲームAIには3種類あります。「キャラクターAI」、「メタAI」、「ナビゲーションAI」です。キャラクターAIでは、「戦闘」や「攻撃する」など、ゲームの状況や行動に関する情報をあらかじめ定義しておきます。それらを結びつけることで、「戦闘がはじまったら、攻撃する」などの一連の流れをつくることができます。このしくみを「ビヘイビアツリー」といいます。」
 キャラクターAIは感覚器官を持っていて、周囲の状況に合わせて自律的に行動している……本当に人間みたいなキャラクターなんですね。ただしキャラクターAIだけだと、戦略的に正しくない行動をとってしまうことがあるそうで、他のキャラクターAIの動きも見ている映画監督のような「メタAI」も使って、複数のキャラクターAIをうまく動かしているそうです。
 さらにゲームの開発テストでも、AIが活用され始めているようです。
「最新ゲームの世界は、私たちが存在している現実の世界に近づいています。3次元で広大な土地があり、何がおこるかわかりません。ですから、私たちがこの世界におこりうるすべてのことを試せないのと同じように、プレイヤーもゲーム中におこるすべてをテストするのは不可能なんです。そこで、QA-AIの取り組みでは、そのゲームテスターを人間からAIに置きかえようとしています。」
 ゲーム分野では、予想以上にAIの活用&実用化が進んでいたんですね! 医療や交通、金融分野と違って、娯楽分野というのは、ある意味で「実験」や「失敗」が許される分野だと思いますので、どんどんAIの実験&活用を進めていって欲しいと思いました。そしてその成果が、他の分野でも活かされることを願っています。
 とても分かりやすい人工知能の入門書でした。防災分野での活用や、会話型AIなど、他にも興味深い記事が満載ですので、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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