『夢のような幸福』2008/2/28
三浦 しをん (著)

独自の見所発見の映画評、旅先の古書店の謎を探索……脳内妄想が暴走する爆笑エッセイ集です。
漫画や小説をこよなく愛する三浦さんなので、漫画や本の話も多いのですが、その読み方がまた面白い☆ 伝説の名作漫画『愛と誠』を再読して不可解な魅力を再検証したり、世界の名作『嵐が丘』を読んで乙女のテイストを堪能したりしています。『嵐が丘』……子供向けのダイジェスト版でしか読んでいないけど、ヒースクリフの性格のねじ曲がりっぷりが嫌で、「この小説のどこが名作なのか?」という感想を抱いた記憶しかありませんでしたが……やっぱり「人物造形が見事」なのでしょうか? 子供向け再編成版でない『嵐が丘』を大人になってから読むと、また違う感想を抱くのかもなーと思いつつ、三浦さんの読書感想(?)を読んで……やっぱりヒースクリフ、性格ねじ曲がり過ぎ、最低なヤツとしか思えませんでした。ごめんなさい。
この本には、たくさんの漫画や小説、映画が紹介されていて、どれも「うーん、さすが作家は目のつけどころが違うねー」と思わされるのですが……目のつけどころが違いすぎかも(笑)。それでも、自分が読んだことのある漫画や小説が出てくると、「なるほど、そうきたか!」とか「うんうん、そうだよね」と漫画や小説を読んだ時の記憶が蘇ってきて楽しめ、読んだことのない漫画や小説については、「ええー面白そう!」と読んでみたくなるような話が続々と……そして思わず、その漫画や小説を買ってしまうのでした(汗)。この本は、間違いなく「本の販売促進」に役だちます。
それにしても……三浦さんの本や漫画を読む量の半端なさよ!
「私の小さな手帳は日記がわりにもなっていて、その日にしたことが簡単に書いてある。これを見ると一目瞭然なのだが、暑い日には仕事量が落ちて逃避行動が増える。ちなみに、六月一か月間に新しく購入して読んだ本(ほとんどが漫画)は四十七冊だったが、七月は五十七冊に増えた。これでも控えているつもりなのに、十冊も増えてるよ!」
……うーん、これだけの肥料が、直木賞や本屋大賞を受賞する作家を生むんですね……。 ふう。……でも「三十時間働いて三時間眠る、という日々を、ここ一週間ほど送っている人間に、素敵な話題があるわけがない。」という生活は、お願いだからやめてください。もっと休んでくれないと、疲れ切ってしまって面白いネタが出てこなくなるかも(おろおろ)。
すごく、続編を読みたくなるエッセイ集ですが……安心してください、続編もあります(笑)。このエッセイ集は、『夢のような幸福』、『乙女なげやり』、『桃色トワイライト』、『悶絶スパイラル』の四冊がシリーズになっていて、文庫本の表紙の絵の人数で何冊目かが分かるという粋な仕掛けになっています。
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