『1%の人は実践しているムダな仕事をなくす数字をよむ技術』2016/5/2
前田 康二郎 (著)

売上や利益、期日や勤務時間、スケジュール管理など「会社の数字」に関する計数感覚を磨くための心構えを教えてくれる本です。
「数字をよむ技術」の「よむ」には、売上3千万円、利益率10%、というようなアラビア数字、漢数字などのデータを「読む」「読みこなす」という意味の他に、さまざまな事象や出来事から数字を「読みあてる」「予測する」という意味も含まれています。この「数字を読む技術(計数感覚)」を磨くためには、次のことを行うと良いそうです。
「計数感覚は、基礎となる一つ一つの数字に目を通し、そしてその結果はどうなったのか、ということの検証で養われます。それを繰り返し行うことで、一つ一つの数字から結果を推測する想像力が身につくのです。」
つまり会社でよく目にする売上高、目標値などの数字を見る時には、漠然と見るのではなく、他の会社や他の時期の売上高と比較したり、目標値と実績値を比較したり、その違いの原因は何かを分析したりすることを意識的に行うことで、計数感覚が磨かれていく……確かに、計数感覚の向上のためには、「意識的に何度も練習(比較分析)」することが大切だと感じました。
そして計数感覚に優れた「1%の人」は、変動要因を多面的な視点でとらえ、効率的に分析しているそうです。
その方法として参考になったのは、仕事の数値分析をする時には、「「上位3つの法則」ですばやく差異を見つける」。これは「上位3つ」で全体の7~8割の差異原因が分かることがほとんどなので、対象全体の7~8割以上が特定できたら、そこで打ち止めにして分析を終わらせるという話でした。在庫管理などのABC分析を全体に応用した考え方のような感じですね。
「数字があるとお互いが誤解のない共通の認識を持つことができます。」
ビジネスでは「勘違い」による損失は本当に避けたいので、分かりにくいと感じた時には、可能な限り「数字」にして話し合うようにすると話を明確化しやすいと思います。
この本は、数値感覚を磨く努力をすることで、仕事を効率化するという心構えを教えてくれます。ただ……個人的には、具体的な数値を使った「計数感覚」の磨き方を教えてもらえると、もっと良かったのに、と感じてしまいました(汗)。前田さんは経理が得意のようなので、売上高推移の分析の仕方とか、業界内の他社との比較の仕方とか、国が発表する経済関連の数値を使った分析の仕方とか、ビジネスではよく行われる数値分析について、具体的な事例で教えてもらえると、もっと実践的に計数感覚を磨けたように思います。数値分析を行うときに、参考にできる指標値にはこんなものがあるとか、参考になるお勧めのサイトや文献、白書などについて、ご自分が利用しているものを実名で紹介してくれると嬉しかったのですが……。
……ということで、この本は仕事術関係の自己啓発書などをよく読んでいる中堅ビジネスマンにとっては、「だいたい知っている」感じのことが多かった気がしますが(汗)、新人ビジネスマンの方にとっては、仕事に関する心構えや、ビジネスマナーを分かりやすく学べて参考になると思います。次のようなアドバイスもありました。
「もしどうしても会うことや電話することができずにメールで一旦難しい問題を連絡しなければいけない場合、私は自分の書いたメールを、相手に送る前に自分宛てに送ってみます。そして、受信トレイを開けた瞬間、生理的に不快に思わないか、文面を読んで自分勝手だなと思う文面ではないか、納得できる内容か、というのを客観的に読んでみます。そぐわない表現があれば修正し、正式な文書として相手にお送りしています。」
とくに新奇な内容があるわけではありませんが、ビジネスマンにとって大切なアドバイスをもらえる本だと思います。新人の方はもちろん、新人教育を行っている中堅ビジネスマンの方にも参考になるのではないでしょうか。読んでみてください。